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12月に出ていた比屋定篤子、久々のニュー・アルバムをようやく。調べてみたら、オリジナル・アルバムとしては10年ぶり7作目。でもこのところ流線形との共演作があったし、アナログ7インチの連発やベスト&レアの編集アルバムが出たり、サトウユウ子との沖縄童謡集があったり…。ご本人もコンスタントにカフェ・ツアーをやっているので、ご無沙汰感はまるでない。それなのにジックリ聴いてみたら、まるで取り憑かれたようになってしまって、繰り返し繰り返し、4〜5回は聴いただろうか。何だが、身も心も浄化された気になっている。

デビュー20周年ということは、カナザワが比屋定の歌声を知って20年。最初にハマったのは2枚目『ささやかれた夢の話』で、3枚目『ルア・ラランジャ』が出た時には、白金にあったソニーで取材もさせて戴いた。その後 結婚されて故郷の沖縄へ戻り、しばしのブランクのあと、インディーで復活。新作はマイペースで歌うようになって4作目になるが、ズバリ、メジャーを離れてからの最高作だろう。

デビュー当時から思っていたことだが、決して美しいとか透明感のある声ではないし、まろやかに包み込むタイプでもないのに、その歌には強い磁場、摩訶不思議な引力がある。彼女だけの、内なるコスモを感じるのだ。真の強さと、それに裏打ちされた優しさが同居した母性の歌というか…。最初に取材させてもらった時に「比屋定さんって、ユタと何か関係あります?」と、少々スピリチュアルな質問をしたが、特に何もないとのこと。「沖縄の自然の豊かさにインスパイアされることはありますが…」みたいな返事だったと記憶している。でも直接的ではないにしろ、都会人の歌唄いからは生まれ得ない、“気” とか “波動” みたいなモノを、彼女の歌に感じてしまうのだ。カナザワはこのニュー・アルバムから、それを再び強く受け止めた。

サウンド・プロデュースは、キリンジでお馴染み、千ヶ崎学。その流れか、キリンジの代表曲<エイリアンズ>をカヴァーしてたり(しかも素晴らしい出来)、キリンジ兄:堀込高樹が作詞で参加している。オープナーの<迷子の言葉>は青山陽一の作詞。以前ライヴ盤に収録していた<カサカサジンジン>は、比屋定の詞に伝説的シンガー:金延幸子が曲をつけた。ライヴの相方である笹子重治も ほぼ全編でギターを弾いていて、実にオーガニックで ゆったり大空を舞うような仕上がり。ボサとかブラジル系といったソフト・ラテンの衣を纏っていても、その実、結構ジャジーで自由度の高い進化系の音でもある。

ふと気づけば、録っているのは、先日某プロジェクトでお邪魔した Happiness Studio の平野さん。その節は、どうもお世話になりました。

もしこの先、ちょっと心が折れそうになってしまった時、きっと自分はまたこのアルバムに手を伸ばすだろう。