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カナザワが解説を執筆させて戴いたラジの『ALLTIME SELECTION』2枚組が、21日にリリース。ついこの間、ソニー時代の5作品が Bridge Inc.から紙ジャケ再発されたばかりなのに…、と思ったら、あれからもう3年半も経っているのネ… この2枚組は、各メジャー・レーベルで続々出している人気シリーズ:GOLDEN☆BESTの一環としてのリリースだけれど、マニア度の高いラジの編集盤で2枚組は、結構な英断。ソニー・ダイレクトの担当A&R:F君の熱意の賜物、と解している。

しかも、ソニー離脱後の2作からも万遍なくセレクト。84年の6作目『午後のレリーフ』はCD化されたものの(でも今や激レア)、85年の最終作『ESPRESSO』は今も未CD化のままで、EMI時代のベスト盤にも収録のなかった<密室>は、今回が初CD化となる。

ラジとえいば、サディスティック・ミカ・バンドやYMO、南佳孝あたりとの関係の深さから、その筋で頻繁に名前が出てくるシンガー。現役時代に大きなヒットがなかったのに、今もそれなりの知名度があるのは、こうした人脈に絡んでのコトだろう。女子高生フォーク・グループ ROW のメンバーとしてデビューし、加藤和彦や高橋幸宏のサポートで ポニー・テール へ進化。これが分裂すると、CMシンガーに活路を求めつつ、ミカ・バンド解散後に生まれたサディスティックスの1st(77年)でシッカリ2曲、リード・ヴォーカルを披露した。最近TVのバラエティの影響で俄かに再評価が進んでいる大貫妙子が、当時 坂本龍一のバックアップを受けていたのに対し、ラジはユキヒロがメインになっていたのが興味深い。ター坊の方が少し年上ながら、よりアダルトなお姐キャラを発揮したのはラジの方だった。

…とはいえ、ユキヒロ主導も77年のソロ・デビュー盤『HEART TO HEART』から、2nd『LOVE HERAT』、3rd 『QUATRE(キャトル)』、4th『真昼の歩道』まで。その後はサスガにYMOに忙殺されたため、5作目『ACOUSTIC MOON』は、担当A&R高久光雄自らがプロデュース。アレンジは井上鑑で、バックはパラシュート+鈴木茂、後藤次利、上原ユカリなどが担った。<ブラック・ムーン>がカセットのCMソングに選ばれ、ラジ自身もメディアに露出するなど最大級のチャンスを得たが、目ぼしい成果は生まれず、一旦ブランクに入っている。

EMI移籍後の前述2作は、西本明、本田達也、瀧本季延なら成るTOP STONEとのコラボが中心。濱田金吾、岸正之らの提供曲や、松下誠アレンジのナンバーもある。ラジ・ファンの中には、この2作からの8曲を目的に、この『ALLTIME SELECTION』を手に入れる方もいるんじゃないだろうか。これらEMI期の再発は、昨年カナザワがユニバーサルで監修した Light Mellow 和モノ復刻に組み込めなかったので、今年の編成に通れば、その中でリイシューさせたいと目論んでいる。

いずれにせよ、急に盛り上がってきたシティ・ポップ熱再燃で、よりソフィスティケイトされたラジに対する注目度も上がってくるはず。カナザワは今回、直接的には解説を書いただけだけど、折に触れて担当氏の相談に乗っていたし、拙ディスク・ガイド『Light Mellow 和モノ』でリコメンしたラジ楽曲は、すべて収録してくれた。そうした意味で、手っ取り早く彼女のキャリアを俯瞰できるアイテムとして、ぜひ手元に置いて戴きたい2枚組全35曲だ。