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いま、今井優子のミニ・アルバム・プロジェクトで大変お世話になっている kyd奏者/アレンジャー/プロデューサー:安部潤さんのソロ・ライヴ@目黒 Blues Alley Japan。これまでいろいろなライヴで彼の演奏に接していたし、ソロ作も04年の初リーダー・アルバムからオン・タイムで聴いているので、一方的に馴染みは深かったが、面識ができたのは今井優子の制作が動き出してから。実際に会うとすごく控え目な方だけど、その寡黙さを保ったまま、音楽的には結構エゲツないことを平気で演っちゃう人でもある(←褒めてます

オフィシャル・サイトのワークス・リストを見ると驚くけれど、Kinki Kidsや嵐、タッキー&翼、ケミストリー、安室奈美恵、杏里、女子十二楽坊、松下奈緒、伊東たけし等など、J−POPモノからアイドル、フュージョン、そしてサントラに劇伴と、まさにジャンルを問わずに大活躍している安部さん。ボサノヴァやクラシカル・クロスオーヴァー系のアレンジにも長けていて、ホントびっくりなのだが…。

でもそんな雑食系の本領は、やっぱりちょっとアウトしていくような、少しばかり変態の入ったジャズ・フュージョン、70年代あたりのクロスオーヴァー・サウンドなのではないか。もちろんスムーズ・ジャズもお得意だけど、予定調和で心地良さを求めるそれより、プレイヤー同士が互いの手の内を探りながらテンション高めのインタープレイを繰り広げる…。遊び心を奥底に隠し持ったアクレッシヴな演奏こそ、アベジュンの真骨頂だと思うのだ。

この日のソロ・ライヴも、まさにそれ。 メンバーは一緒に Primitive Cool を組む波多江健 (ds) に、Ray (ac.b)、山田智之 (perc)、グスターボ・アナクレート (sax)、三井大生 (violin) 。ギターレスでヴァイオリン、ベースはウッド、しかもサックスはソプラノの名手というところで、既に怪しい(?)匂いが立ち込める。ヴァイオリン入りウェザー・リポート? ギターレスのマハヴィシュヌ・オーケストラ? 案の定、<7th Floor>なんて7拍子の新曲を演ったりして。

ご本人と話すと、よくジョージ・デュークの名前が出てくるけれど、コンテンポラリー・ジャズもファンクも歌モノ・ポップスもイケてて、ブラジル音楽だって大好き。生ピアノもシンセも両方スゴく、時に飛び道具的な使い方もやっちゃう。そういう自由なスタンスが、ジョージ・デュークに憧憬を抱く理由だろう。プリミティヴで野性味のあるパーカッションとの絡みは、まさに、南米系パーカッション奏者を好んで起用したウェザーやリターン・トゥ・フォーエヴァーを髣髴。ソプラノ・サックスの知的な響きは、当然ウェイン・ショーターを想起する。でも一方でヴァイオリンの存在は、ジャン・リュック・ポンティやジェリー・グッドマンより、「あれ!? もしかしてダリル・ウェイ(カーヴド・エア)?」なんて瞬間が覗けたり。

客席にも安部さんのミュージシャン仲間が多数来ており、彼の人柄と人脈の広さ、音楽的才能の確かさを物語る。イヤイヤ、久しぶりにシビレるような刺激をいっぱい貰った、良きライヴでした。