ars_r&r alternative
先月出た38スペシャルの紙ジャケ/SHM-CDリイシュー10枚もまだ聴き切れてないうちに、もう今月分のアトランタ・リズム・セクション(ARS)10枚が登場した。外資メジャーで一番カタログが豊富なだけに、ユニバーサルが本気を出すと非常にヤバイ。昨今の洋楽カタログ・シーンは、全般的にグロスで稼ぐ廉価再発に傾斜してきた印象だけれど、マニアはやはり、多少値は張ってもシッカリ作り込んだ復刻モノを無視できない。だからこうした準大物級(日本での人気的に)の作品群を丁寧に出されると、「ええぃ、この際オトナ買いせにゃ…」となってしまう。やっぱり長きに渡り、音楽を嗜好品として “鑑賞” してきた日本では、カタログ文化に対する価値感が、大量消費のUSとは違うのよ。

…というワケで、英国でCDリイシューが進むたびに、カナザワがコツコツ買い足していたアトランタ・リズム・セクションのMCA〜ポリドール期アルバムが、ココで一気にまとめて復刻。でもさすがにカナザワも、72年デビュー作からの3枚を手にしたのは、今回が初めて。一番馴染みがあるのは、言うまでもなく、全米7位の<Imaginary Lover>を含む3曲をヒット・チャートに送り込んだ7作目『CHAMPAGNE JAM』(78年)や79年のライヴ・アルバム『ARE YOU READY!』だけれど、その成功の礎となったのは、その前作であるこの6作目(76年)『A ROCK AND ROLL ALTERNATIVE(ロックン・ロール魂)』だった。最初のトップ10ヒット<So Into You>もココから生まれ、グループの人気を米国全土に広めている。

…と同時に、ジョージア出身のサザン・ロック勢ながら、より都会的な音作りをハッキリと打ち出すようになったアルバムでも。5作目『RED TAPE』はオールマン後継を意識した作品だったが、南部のセッション・ミュージシャン集団である出自に自覚的になったか、本作では持ち前のフレキシビリティを発揮。フリートウッド・マックやピーター・フランプトンが大ブレイクし、デイヴ・メイスンのようなスワンプ系英国人も人気を集めるのを横目に捉えながら、自分たちだけの洗練されたサザン・ロック像を模索したのである。“アトランタのTOTO” と言っては大袈裟だが、音楽スタイルはともかく、バンド・ポジション的には、あながち的外れではないと思うな。

それだけに当時の邦題『ロックン・ロール魂』は、サザン・ロックの荒っぽさを売りにしているようでちょっと的外れ。でもそれは今だから言えることで、当時の日本では、その荒くれ加減がサザン・ロックのパブリック・イメージだった。リッケンバッカーのベースを大きな太鼓腹に乗せて暴れるロン毛に黒縁メガネの巨漢ベーシスト:故ポール・ゴダートは、ライヴでは “秘密兵器” なんて呼ばれていたっけ。バンドの前身が、<Spooky>や<Stormy>で知られる南部のソフト・ロック・グループ:クラシックスIVというのも、ずいぶん後になって意識されるようになった気がする。でもARSが持つソフィスティケイトされたメロウネスが時流に合せての付け焼き刃ではないことは、そうしたメンバーやスタッフたちのキャリアに裏付けられている。

AORのタネなんて、世界にウン百枚しかない宅録盤や激レア盤を必死で探して大枚叩かなくても、意外にコソッと身近に転がっていたりするもの。今の和モノ・ブームも、実はそこが原点だ。

それにしても、このアルバムや『CHAMPAGNE JAM』、それに続く『UNDERDOG』と、さりげなくエンボスの凝ったジャケットだったのも、この再発で思い出した次第。う〜ん、やっぱ紙ジャケには紙ジャケならではの魅力があるな そういえば、今年の干支、犬にまつわるタイトルや多い連中でもある。