rupert holmes_3

ルパート・ホームズが70年代中盤にエピックからリリースした初期3作品『WIDESCREEN』『RUPERT HOLMES』『SINGLES』が、英Cherry Redから廉価3枚組ボックス(ペラい紙ジャケ仕様)でリイシューされた。20ページのカラー・ブックレットも付いていて、お値段は国内盤CD1枚程度とリーズナブルである。

ただこの3枚は、05年に米ユニバーサル系のHip-O Selectがルパートのカタログ全作を集成したCD5枚組ボックス『CAST OF CHARACTERS ~ The Rupert Holmes Songbook』で、2in1形式でCD化済み(2nd/3rdは初)。追って日本では、エアー・メイル・レコーディングスが08年にシッカリした紙ジャケ仕様で、3枚別個に同時復刻している。だから基本的には、特に珍しいシロモノではない。中でも74年のデビュー作『WIDESCREEN』は、サントラ系再発を得意とする Varese Sarabande から95年/01年にもボーナス・トラックを入れ替えて出されており、我がコレクションにはコレで都合6枚の『WIDESCREEN』がCDであることになる。オマケに、同じ Varese Sarabande 発のベスト盤『THE EPOCH COLLECTION』(94年)では、『RUPERT HOLMES』『SINGLES』それぞれから各7〜8曲が抜かれている状態なので、何だか使い回されているなぁ… という印象が拭えないのだ。

それなのに、また今回の3枚組を買ったのには、明確な理由があった。これまで表に出たことのないライヴ・レコーディングが、数曲ボーナス収録されているのだ。録音は78年4月、ニューヨークのボトムラインで、バーブラ・ストライサンド『スター誕生』に提供した<Queen Bee>のみ、同時期にフィラデルフィアで録音された。アルバムでいうと、エピックを離れて最初の作『PERSUIT OF HAPINESS(浪漫)』のツアーだと思われる。正直 音質は良くなく、ブートレグ並み。ヴォーカルがシッカリ聴こえるのが救いだが、おそらくは記録用として客席でカセットで録ったものだろう。それでもルパートのオフィシャル・ライヴ録音はとても貴重。記憶にあるのは、世界歌謡祭か何かで来日した時の映像くらいだと思う。

他には<Terminal>のシングル・ヴァージョが初出。5枚組ボックス所収の『スター誕生』没曲のデモや、八神純子に提供された<Magic Trick>のオリジナル版も入っている。トータルすると、アルバム3枚分のオリジナル30曲に対して、ボーナス13曲(足+MC で3tr)だから、コスト・パフォーマンスは充分。元々3作とも内容が良く、『WIDESCREEN』は後に彼がミュージカル作曲家として成功するのを示した出来。バーブラがルパートを起用したのも、このアルバムあればこそ、だった。また『SINGLES』は、タイトル通りシングル・ヒット集的な作りを狙った作品。実際にシングル・カットされた<Who What When Where Why>は、マンハッタン・トランスファーやディオンヌ・ワーウィック、キャロル・ダグラス、そしてクラブ人気となったマデレインがカヴァーしている。<The Last Of The Romantics>はエンゲルベルト・フンパーディンクが歌い、彼の78年作のアルバム・タイトル曲になった。また<I Don't Want To Get Over You>は、マック・デイヴィスやマーカス・ジョセフ、メル・カーターがリメイク。シングルのみに終わったメル・カーター版を制作したのは、他ならぬジェイ・グレイドン&デヴィッド・フォスターの名コンビだ。ルパートが目論んだ “シングル集” のコンセプトは、あながち的外れではなかったのである。