laura nyro_ eli

早朝から深夜まで出ずっぱりの、長〜い一日。運転以外はたいしたコトをしてないのに、家に戻ったらドッと疲れた… そこで寝酒に、取って置きの吟醸酒をチビチビと。BGMはローラ・ニーロ。昨年末に、生誕70周年記念で1st『MORE THAN A NEW DISCOVERY』と2nd『ELI AND THE THIRTEENTH CONFESSION(イーライと13番目の懺悔)』のモノ&ステレオ・ヴァージョンが紙ジャケット/Blu-Spec CD2で再発されたので、書い直したままだったそれを手に取った。

68年発表の本作『イーライ…』は、米コロムビア移籍後の初アルバム。前作はヴァーヴ・フォークウェイズ(後のヴァーヴ・フォアキャスト)からのリリースだったが、商業的には失敗し、ポップすぎるアレンジも不評を買っていた。そこに乗り出してきたのが、かのデヴィッド・ゲフィン。アサイラム、ゲフィンといった大手レーベル創設者で、後に映画界へ進出してスティーヴン・スピルバーグらとドリームワークスを設立している。そのゲフィンの最初の大仕事が、このローラ。まだ20代前半だった彼は、勤務先の有名タレント・エージェントを辞めてローラのマネージャーとなり、彼女をヴァーヴからコロムビアへ移らせて、創作の自由を取り戻した。本作のプロデュース/アレンジにチャーリー・カレロを招いたのも、ゲフィンの仕事。ビジネスマンとして知られ、悪名の高い人だが、そこに伸し上がる過程では、やはり音楽人として確かな手腕を発揮していた。

パイド・パイパー・ハウス)長門芳郎さんの解説に拠ると、ピアノとコーラスのローラ以外に、ヒュー・マクラッケン(g)やチャック・レイニー(b)、ポール・グリフィン(kyd)、ズート・シムス/ジョー・ファレル(sax)らが参加しているそう。ところが何故かクレジットは見当たらず…。でも実際誰がプレイしているかはあまり重要ではなく、ローラ自身のヴォーカル表現、楽曲の強さに、グイグイと惹きつけられる。ここからフィフス・ディメンションが<Stond Soul Picnic>と<Sweet Blindness>、スリー・ドッグ・ナイトが<Eli's Comin'>をカヴァーしてヒットさせたことから、それを書いたローラが注目されるようになった。

シルエットになっている裏ジャケのモノクロ写真は、成長したローラが17歳の頃の自分に別れのキスをしている構図。静謐な音に支えられた歌の情念の深さは、こうしたアートワークからもジワジワ伝わってくる。こうして創造力を掻き立てられるのが、フィジカルの良いところだ。そのヴォーカルの表情の豊かさ、機微に富んだ歌い口は、まるでオーケストラのよう。ローラという女性は、自信家のクセにナイーヴでシャイ、そしてピュア。一途な一方で気分屋でもあったというから、今様にいえば かなり面倒くさい女性だったらしい。でもそれを越える素晴らしさが、彼女の歌には存在する。当のローラはもちろんだけど、アルバムが完パケた瞬間、ゲフィンやカレロを始めとする周辺スタッフは、言葉にできぬほどの大きな達成感を手にしたに違いない。

酔いが回って気持ち良くなり、モノとステレオの聴き比べはできなかったものの、しばらくぶりにジックリ聴いて、万感迫るものがあった。ひとり酒でも呑む時に、そっと語り合うように聴きたいアルバムである。