bango flying circus

この4月に、元シカゴのダニー・セラフィン率いるCTAこと カリフォルニア・トランジット・オーソリティの初来日公演が決定(詳細記事はこちら))したので、そのシカゴ周辺の初CD化アイテムをひとつ。71年に“シカゴの弟分” としてウィリアム・ジェイムス・ガルシオのプロデュースでデビューしたマデュラの前身バンド、バンガー・フライング・サーカス。その唯一のアルバムが韓国Big Pinkで初CD化され、年末に国内仕様盤が出た。

バンガー・フライング・サーカスは68年にイリノイ州シカゴで結成。メンバーはシャドウズ・オブ・ザ・ナイト出身のデヴィッド・ホーク・ウォリンスキー(kyd,vo)と、アラン・デカルロ(g,vo)、トム・シフォー(ds)の3人。だがシフォーは間もなくバンドを離れ、H.P.ラヴクラフトに在籍したマイケル・デグサ(ds,perc)が参加する。このラインナップでレコーディングされたのが、ダンヒル・レコードからリリースされた本作だ。だがデグサは翌年、H.P.ラヴクラフトに出戻り。ホークとデカルロは新たに見つけたロス・サロモーンを後任ドラマーに迎え、バンガー・フライング・サーカスの発展系となるマデュラを結成した。マデュラのデビュー作は、シカゴと同様2枚組の大作で、73年発表の『2』にはテリー・キャスが参加している。

マデュラ解散後、ホークはシカゴの『VII』(74年)から『14』(80年)に断続的に参加。ピーター・セテラの初ソロ作にも顔を出すが、何といっても特筆すべきはルーファスへの加入である。その最初がルーファス&チャカ・カーン名義による『STREET PLAYER』で、新参にも関わらず、アルバム収録曲の半分以上を書き下ろした。シカゴのヴァージョンで有名なアルバム・タイトル曲<Street Player>は、ダニー・セラフィンとホークの共作。その後ホークはルーファス&チャカ『MASTERJAM』(79年)をプロデュースしたクインシー・ジョーンズに請われ、同僚のジョン・ロビンソン(ds)と共にクインシー・ファミリーに。マイケル・ジャクソン『OFF THE WALL』やクインシー『THE DUDE(愛のコリーダ)』に貢献した後、グレン・フライのソロ活動でも活躍している。ダニーとも、ジェリー/ケリーやその後継バンド:ダコタを共同プロデュース。一方デカルロとサロモーンは、ロバート・ラムの初ソロ作『SKINNY BOY』(74年)に参加した。

話を戻して、バンガー・フライング・サーカスのワン&オンリー作。その内容は、69年作だけに、サイケデリック臭がプンプン漂う、プログレッシヴなブルース・ロック・アルバムと言える。マデュラほどのスケール感はないが、その分コンパクトにまとまっていて解りやすい。当然ながらシカゴに通じる部分が多々あって、初期シカゴのファンにはいろいろ面白いはず。またジャズっぽい部分は、やはりシカゴ周辺にいたジェイムス・ヴィンセントを、ラテン部分はサンタナ周辺を髣髴させる。ブルース、ジャズ、ソウルにラテンとミクスチャー度が高く、しかもハイ・テンションのインタープレイはかなりの聴きモノ。デカルロのワイルドなロック・ギターに対し、ホークはピアノやオルガンで多彩さを演出し、スウィンギーなジャズ・ピアノを披露したかと思えば、ブリージーなオルガンも、といった具合で、知的な才能を垣間見せる。収録曲も、デカルロ提供とカヴァー各1曲を除いて、すべてホークの書き下ろしだ。

ヴォーカル・ハーモニーが意外に良いのも収穫だったが、一番驚いたのは、デカルロがギターとスキャットのユニゾン奏法を披露していること。後にジョージ・ベンソンの十八番として有名になるが、既に69年時点でデカルロが完全にモノにしていたようだ。果たしてオリジナルは誰なの?と、非常に興味が湧くところ。こうした重要ポイントを解りやすく集約したのが、アルバム・ラストに収められたビートルズのインスト・カヴァー<Norwegian Wood>だ。激しさとインテリジェンスが同居するオルガン・プレイは、まるでナイスや初期ELPの頃のキース・エマーソンのようだし、サイケ風味を残しつつも凝ったアレンジは、初期イエスを思わせる。リズムがラテンに転じると、そこは見事なサンタナ・ワールド。ハイライトはギターとスキャットのユニゾンで、ココは熱く熱く展開していく。ぶっちゃけ、マデュラより面白いワ。

ところでCTA。来日メンバーにはビル・チャンプリンやドニー・デイカスといった元シカゴ勢の同行が発表されている。ダニーとドニーが揃い踏みってことは、もしかして<Street Player>も期待してイイんですかね?