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取り急ぎの締切の山を片付け、夜になって、ようやく確定申告の書類作りを開始。「え、明日締切でしょ!? 間に合うの」「間に合いません」でも僕らモノ書きの原稿料は、予め源泉徴収されて振り込まれてくるので、確定申告=還付申告になる。で、この還付の場合は3月15日過ぎても大丈夫なのだ。何故かこの時期はいつも締切ラッシュに陥り、例年 数日遅れで申告するのが常になってしまっている。先月までは「今年は大丈夫そう」と思っていたのに、そのあと大きい仕事が飛び込んで、結局いつものパターンになってしまった

さて、ご紹介のネタもちょっと…、というか大きく遅れ気味のアイテム。昨年11月末に通販限定でリイシューされていた、故・佐藤博の90年代作品3枚『GOOD MORNING』『SELF JAM』『HAPPY & LUCKY』である。アルファ期の佐藤オリジナル作でも最終期に当たり、クオリティ的にも完成域に到達した安定の作。円熟というと、ご本人が空の上で顰めツラしてそうだが、実験色が強かったアルファ初期とは違った、落ち着いたトーンがあるのは確かだ。

また、これまでのアルファ期の佐藤作復刻は、代表作『awakening』のように普通に市販で流通しているモノと、サード・パーティであるBridge Inc.経由で紙ジャケットでリイシューされたものとが混在している。その終盤を絞めるこの3枚は、Sony Music Shop/オーダーメイドファクトリーでの限定商品。それでも最新リマスタリングにBlu-Spec CD2の高音質仕様で、ボーナス・トラックも入った丁寧なリイシューなので、これは忘れずにチェックしておきたい。

まず90年作『GOOD MORNING』は、L.A.録音による歌モノ・フュージョン/AOR系の会心作。ジョン・ロビンソン(ds)、マイケル・ランドゥ/アル・マッケイ(g)、グレッグ・フィリンゲインズ(kyd)、ネーザン・イースト/フレディ・ワシントン(b)、ポウリーニョ・ダ・コスタ(perc)、ラリー・ウィリアムス(sax)、ウォーターズ(cho)というキラ星の如きメンバーに加え、パトリース・ラッシェンがヴォーカルで参加している。そこで思い出すのは「awakening』のウェンディ・マシューズの瑞々しい歌声。そのイメージを引き継ぎつつ、というコトで、キュートな歌声を持つパトリースに白羽の矢を立てたのだろう。そのキャスティングのハマリの良さが、このアルバムの大きな魅力。併行してレゲエ・ビートの取り込み方、特にダブ手法の昇華が、この頃の氏のテーマだったのでは?と思う節もある。ボーナスは3曲あって、いずれも彼が出演していたFM横浜『THE LEGEND』絡みの音源。中でも<Apple Knocler>は、ハックルバック時代の曲を番組テーマ用に新録したもの。ポンタ氏との<Landmark>も素晴らしく、正式発表がなかったのが不思議なほどだ。

オリジナル11作目の91年作『SELF JAM』は、アートワークからも察せられるように、シンガー・ソングライター:佐藤博にスポットを当てた佇まいが特徴。英語曲は、十八番のビートルズ・カヴァー<Come Together>ともう1曲に留め、半ば日本語にこだわった形になった。作詞には南佳孝の名もある。トラックは主要部分は氏のプログラムで、サポート陣には鈴木茂/鳥山雄司/古川望(g)、本田雅人(sax)、山根麻衣&栄子(cho)など必要最低限。だからタイトルも『SELF JAM』なのだろう。 前作から一転、リリカルな印象のあるアルバムになった。ボーナス曲は、<Come Together>のリミックス・ヴァージョン。

2匹の愛犬の名をタイトルにした『HAPPY & LUCKY』は、93年に発表されたアルファでのオリジナル最終作。スティーリー・ダンで有名なゲイリー・カッツがプロデュースしているのがミソだが、豪華ミュージシャンの参加などなく、スタッフは前作同様に限定的。それでも顔ぶれは、松原正樹/山岸潤史(g)、吉川忠英(ac.g)、八木のぶお(harmonica)、鈴木明夫(sax)、高尾直樹/CANDEE/佐々木久美(cho)…とほぼ一新され、佐藤のコダワリの深さを感じさせる。しかも尖ったトコロはおくびにも出さず、ゆったりたおやかで、心ホノボノ。難しいコトをやっていても、それをスッキリ気持ち良く聴かせる…。その粋を集めたような作品で、何処か名盤『awakening」に通じるトコロを醸し出すアルバムだ。ボーナスは、本編収録曲<Tokyo>の別ミックス。

一般的には、ティン・パン・アレー系のキーボード奏者というのが佐藤博のイメージだけれど、ソロ・アクトとしての本質は、プログラムを駆使した宅録ベースの代表作『awakening』にある。その延長上にあって、ひとつのタームのピークに位置するのが、このアルファ最終期といえるだろう。

Sony Music Shop 佐藤博コーナー