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KADOKAWAムックの『別冊カドカワ DirecT 09』の特集【AORリバイバル】に寄稿した。目線としては邦洋綯い交ぜで、24ページ中14ページを執筆。総論とレビューの他はインタビューが記事の中心で、カナザワは角松敏生とブルー・ペパースに取材している。他に登場するのは、芳野藤丸と田中康夫と、何故か知り合いばかりだったりして…

『別冊カドカワ DirecT』はアイドル系の雑誌というイメージで、表紙などはまさにその通り。でも後半部分では結構幅広いジャンルを発信していて…。その辺りは今回の話をもらって初めて知った。何せ今回の第2特集はヘヴィメタ。アイドルから音楽に入った人に、その後の指針を与えるという意味では、なかなか面白い試みと言える。だって、大人たちのアイドル商法に絡め取られてしまった結果が、いわゆるオタク、イイ歳こいたアイドル追っ掛けオヤジたち、なワケでしょう? そもそもアイドルというのは、偶像化による擬似恋愛体験だから、思春期過ぎたら身近な異性へ興味が移っていくのが健全なのだ。

さて、今回の特集『AORリバイバル』。周辺事情に詳しい方だと、ちょっと「?」となりそうだが、キーワードは「J-AOR」だと考えると分かりやすい。もともとは、SuchmosやNulbarichらが若い世代の指示を集め、なおかつTV番組『YOUは何しに日本へ』では、海外から日本へアナログ・レコードを買いにやってくる海外の若者たちが大貫妙子や吉田美奈子、山下達郎といった70〜80'sシティポップを探している、という動きを察知してのコト。その大元を辿っていくと、洋楽AORにぶつかった、という感覚だ。なので、ヒップホップやアシッド・ジャズ寄りのceroやSuchmosではなく、ブルー・ペパーズなのである。カナザワと彼らの只ならぬ関係(?)を知っている当ブログのお客様は、“仕込み” だと疑うかもしれないが、彼らは編集部からの指名で、カナザワへの依頼はホントに偶然だったのだ。

ちょうどカナザワが準レギュラー的に書いているレコードコレクターズ誌も、2号連続でシティポップ特集。だから、何か世を挙げてのシティポップ・ブーム到来を感じてしまう。もちろん、04年に最初のディスクガイド『Light Mellow 和モノ 669』を監修した者として、盛り上がってくれるのはメチャ嬉しいが、変にブームになると、あとは落ちるだけ…。なのでその先、何処に軟着陸するか、不時着させていくかが気になってしまう。売る側やメディアは次々ネタを繰り出すだけで、その後先は考えない。でも我々のような立場では、自分の得意分野が盛り上がると、今度はその先が心配になる。今回はシティポップや和モノがアナログ復活の旗頭になっている面もあり、そこもまた気掛かり。音楽ライターという立場からすれば、一気にブームを盛り上げるより、シッカリ定着させていくことを一番に考えたいのだ。

そうした流れをクレヴァーに捉えているのが角松だし、実世代として体現しつつ冷静に分析しているのがブルー・ペパーズの2人。いわゆるニュー・アルバム制作秘話や自己紹介のようなインタビューではなく、「シティポップ・ブーム」の分析的な話なので、そういう視点で読んでいただくと面白い。