ponta_音楽境地
 
デビュー45周年を迎えた日本のトップ・ドラマー:村上“ポンタ”秀一のライヴ・スペシャル『Debut The 45's Anniversary #1 音楽境地 〜奇跡のJAZZ FUSION NIGHT〜』@中野サンプラザ を観た。マネージャー氏から断片的な話は聞いていたが、“一夜限りのスーパープレミアムセッション” と謳うくらいで、とにかくゲストが豪華。そりゃあ瞬時にチケットがソールドアウトになるのも当然だろう。良席は記念品付きで、終演後には2ショット撮影会も。ファンは嬉しいと思うけど、アーティストも最近は大変だなぁ…

タイムテーブルがキツイのだろう、定刻キッカリに照明が落ちて、MCを務めるフリー・アナウンサー:田中美和子の仕切りでライヴ・スタート。ノッケから KYLYNの<Inner Wind>で畳かけてくる。演奏陣は、渡辺香津美(g)、グレッグ・リー(b)、国府弘子(pf)、大坪稔明(kyd)、斉藤ノブ・三沢またろう(perc)、Fire Horn+2の5管から成るスペシャル・バンド。続いて名曲<Unicorn>がプレイされるが、演奏がミニマムになったと思ったら既にオールスターズは袖へはけ、ポンタと香津美、グレッグの “MOBO III” に縮小している。その分ジャジーで自由度が高く、香津美のギターが大暴れ。自ずとポンタも反応し、3人でニューヨークのグラブを回った頃を髣髴させた。このMOBO IIIのセットで、さらに3曲。<Σ>では、途中で深紅の長襦袢の女性ダンサーが舞台袖に現れ、艶やかに舞い始めたと思ったらすぐ姿を消し…。少し間をおいて再び登場すると、今度は踊りながらピアノに近づき、突如鍵盤を叩き始める。「エェッ、これは何?」状態。瞬間、踊り子のピアノ乱れ弾き?という思いが脳裏をかすめたが、そのピアノは極めて音楽的なフリー・フォームだと気付き、「じゃぁ誰なの?」と。

遠目に見ていたのでまったく顔が確認できなかったが、この長襦袢の女性、実はジャズ・ピアニスト:国府弘子だった。MCによれば、3日前ぐらいに急に呼び出されたそうで、パーティ・グッズのネット通販お急ぎ便で、この妖艶な衣装を調達したそう。いやいや、かなり堂に入った演出で、軽く度肝抜かれました

田中美和子とのMCが続く中、舞台は高中正義のセットへ。相変わらずのスリムさで、派手なスーツもお馴染みの高中だが、ちょっと体調不良で微熱アリとか。それでもギャグを一発カマしてからギターを手に取り、何ら遜色のないパフォーマンスで、<Thunder Storm> <Mambo No.5> <Blue Lagoon> <ReadyTo Fly> そして<黒船>と、グウの音も出ない完璧な定番曲オン・パレードを披露してくれた。メンバーは最近の高中バンドにポンタが乗った形で、岡沢章(b)、小島良喜(kyd)、本間将人(kyd,sax)、斉藤ノブ・三沢またろう(perc)の布陣。そういえば、自分がポンタの名前を意識するようになったのは、『TAKANAKA II』だったかもしれん、なんてコトを思い出しつつ。最近の高中は、比較的オリジナルのアレンジに戻っている傾向があるので、そこも往年のファン的には馴染みやすかった。

続いては、一部のハイライトである角松敏生。今年58歳の彼が、今日のゲストで一番若いペーペーである、というのが笑える。何を演るかは前もって発表済みながら、それをどう聴かせるかは当日のお楽しみ。とはいえ、数日前に角松スタジオへ行った時、お気に入りのレス・ポールが2本とも置いてない。「明日ポンタさんのリハなので、楽器だけ前ノリなのよ」 そこでどんなアレンジで行くのか、おおよそ推察できたが、やはり<Sea Line>はメロウ・ミディアムのスタイルで。この日の唯一の歌モノ<Ramp In>は、コーラス不在を除けば、ほぼいつも通りのアレンジ。それでも岡沢、国分、大坪、ノブ&またろう、Fire Hornsというメンツの新鮮さで、従来の豊潤さとはニュアンスが違っていた。もちろん角松のヴォーカルは一曲入魂。それでも唯一のヴォーカル曲、しかもバラードで、オーディエンスの心をガシッっと持って行くあたりは、サスガとしか言いようがない。近年のポンタ氏は歌に寄り添うなようなバラードでのプレイや “焼きソバ” と言われるブラシ使いに円熟の妙を見せるが、この壮大なバラードには、やはりポンタの歌うようなドラミングがよく似合う。
そして角松セット3曲目は、キメキメのインスト<OSHI-TAO-SHITAI>。が、カウントから滑り出しと思ったら、呼吸が合わずにすぐストップ。そこで角松、「ポンちゃん、いま他の曲やったでしょ?」 この時は「?」だったが、その謎はちょっと後に解き明かされることになる。リプレイはスンナリ進み、各人のソロ回しもつつがなく。やっぱ盛り上がるね、この曲は ただし岡沢さんだけは、職人らしくシッカと後ろでグルーヴを守り続ける。そこにこの人のシグネイチャーがあるワケだ。

インターミッションを挟んでの第2部は、いわばトリビュート・コーナー。最初は松岡直也で、代役はオルケスタ・デル・ソル〜熱帯ジャズ楽団で知られる森村献。松岡さん亡き後、彼以外に日本のラテン・フュージョン・シーンを支えるピアニストはいない。そしてギターにはウィシングに在籍した和田アキラが参加し、往年の松岡メロディ3曲を披露。ラテンだサルサだと言っても、松岡ナンバーの生命線は日本人らしい情緒を湛えたメロディにある。ポンタ氏もそこを力説。それがあるからこそ、カラフルなパーカッションやエッヂィなギターが映えるのだ。一方で高橋ゲタ夫やペッカーといった往年のメンバー不参加は残念なところだけど、岡沢章にノブ&またろうなら不足はない。特にまたろうサンのプレイは随所で光っていたし、時々ゲタオっぽいフレーズを挟み込んでた岡沢さんにもニンマリさせられた。

続いては、ポンタ氏の盟友:大村憲司トリビュート。何せ「憲司を追っかけてプロになった」くらいの間柄である。ココでそのパートを担うのは、当初はゲストに名前のなかったChar。急遽レパートリーに組み込まれたのが、ポンタをして「一度この曲を演りたかった」という<Smoky>だ。そしてココで、角松発言の「他の曲」の謎が氷解。要は<OSHI-TAO-SHITAI>と<Smoky>の裏のキメがソックリなので、それを自ら茶化したのだった メンバーはポンタ、Char、国府弘子に岡沢章。如何にもロック・スターらしい華やかな、でも少しシャレオツな<Smoky >でありました。「今日はポンタというより、憲司のためにココへ来た。憲司、見てろよ」なんて言い回しも、Charならでは。そして大村憲司のレパートリーから<Tokyo Rose>をチョイスし、3人の変わらぬスピリットを感じさせた。

本編最後は、深町純のトリビュート。彼の最大の功績は東京とニューヨークのジャズ・フュージョン・シーンを交流させたことだから、出し物はやはりニューヨーク・オールスターズ界隈になる。オールスターズのドラムはスティーヴ・ガッドだったが、その前身たる21st Century Bandやブレッカー・ブラザーズとの共演盤ではポンタが叩いていたのだ。この時のメンバーは、松岡セットとほぼ同じで、森村献が国府にチェンジしただけ。ニューヨーク・オール・スターズのレパートリーだった<Sara Smile>では、本間将人がデヴィッド・サンボーンばりの泣きのブロウを披露した。<Deperture In The Dark>では、分かっていながら、そのスケールの大きさに改めてビックリ。5管+2パーカッションのビッグ・バンド・スタイルが、この頃のフュージョンにはよく似合っていた。その起爆剤がポンタだったということがよく分かるセットでもあった。

そしてアンコールは、闘病中の佐山雅弘に変わり、国府、岡沢との臨編 PONTA BOXで1曲。最後にはお孫さんが登場して花束贈呈。「カッコよかった!」なんて言われちゃって、お爺ちゃん好相崩しっぱなしという微笑ましいシーンで幕。初めて会った時のポンタさんは、「こちとら厄介者ぢゃ。文句あるか、ワレ〜!?」みたいにスゴまれた記憶があるが(その時はまだライター稼業を始める前で角松友人として会った)… いやいや、ご苦労様でした。

ふと気づけば、もう10時過ぎという長丁場。場面展開のスムーズさもあって、アッと言う間の3時間半でした。11月には歌モノをテーマにした『音楽境地』第2弾が発表。これはまた見逃せないぞ。

 《Set List 第1部》
●村上ポンタ秀一 Special Band
1. INNER WIND
● MOBO
2. UNICORN
3. 遠州つばめ返し
4. Σ
5. SPLASH
●高中正義
6. THUNDERSTORM
7. MAMBO NO.5 (DISCO DANGO)
8. BLUE LAGOON
9. READY TO FLY〜黒船
●角松敏生
10. SEA LINE
11. RAMP IN
12. OSHI-TAO-SHITAI

 《Set List 第2部》
●TRIBUTE TO 松岡直也
13. A SEASON OF LOVE
14. NOCHE CORRIENDO
15. A MEMORY OF MAJORCA
●TRIBUTE TO 大村憲司
16. SMOKY
17. TOKYO ROSE
●TRIBUTE TO 深町純
18. ON THE MOVE
19. SARA SMILE
20. DEPARTURE IN THE DARK

= Encour =
●PONTA BOX
21. POOH-SONG