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先日、都内で少し空き時間ができ、久々に大型CDショップを徘徊。ジャズ・フュージョンのフロアで、【ウェス・モンゴメリー 生誕95周年及び没後50年記念再発シリーズ】なんてキャンペーンをやっていることを知った。ロックやソウル、ジャズ・フュージョン、そしてシティ・ポップスなど、自分の守備範囲の再発モノに関してはアンテナをしかと伸ばしているつもりだが、それでも時々、全然そこに引っ掛ってこないタマがある。宣伝不足か、あるいは当方の情報収集力不足か!? ま、犯人探しはともかく、ネット情報はどうしても偏りがちゆえ、その弊害ではあるのだろう。

で、没後50年のウェス。当ブログのお客様なら誰でも知っているであろう名盤にして、クロスオーヴァー・フュージョンの起源的一作でもある『A DAY IN THE LIFE』は、同時にウェス一世一代の大ヒット作でもある。68年当時でジャズ作品が20万枚超のベスト・セラーになったということは、ジャズ・ファン以外の音楽好きが購入に動いた、ということ。つまりは、万人受けするイージー・リスニング・ジャズの夜明けであり、今でいうスムーズ・ジャズ誕生の瞬間だった。だが当のウェスは、そのアルバムがヒット街道驀進中の68年6月、心臓発作により45歳で頓死している。

ここに紹介する『DOWN HERE ON THE GROUND』は、ウェスの急逝後『A DAY IN THE LIFE』に続くアルバム、つまりは遺作として世に出たモノだ。録音は67年末〜68年初頭。そしてその数ヶ月後、亡くなる前月にもう1枚『ROAD SONG』をレコーディングしている。このように偶然にも作品を作り溜めていたのは、ヴァーヴ・レーベルでウェスをジックリ育ててきたプロデューサーのクリード・テイラーが新たにA&Mに移って、自分のプロデュース・シリーズ;Creed Taylor Issuesを立ち上げた直後だったため(独立後のCTIは Creed Taylor Incorporation)。その看板アーティストとしてクリードと共にA&M入りしたウェスは、幸か不幸か、そこで矢継ぎ早にアルバム3枚分のレコーディングを行なっていた。

さてこのA&M3部作。前述通り『A DAY IN THE LIFE』が代表作なのは言うまでもないが、音の方向性は3枚とも一貫していてブレがなく、内容にも遜色がない。極論すれば『A DAY IN THE LIFE』は、最初に世に出たこと、選曲のインパクトでエポック・メイキングな存在になった、と言っていいだろう。ルディ・ヴァン・ゲルターの録音、グラディ・テイト(ds)、ロン・カーター(b)、ハービー・ハンコック(pf)にドン・セベスキー編のオーケストラという主要メンバーも変わらない。目立った違いは、エミール・デオダートが2曲アレンジを手掛け、マイク・マイニエリやヒューバート・ロウズが参加したことだけ。でもそれもCTIへの動きを考えれば、言わば既定路線と言える。ウェス作品は今まで『A DAY IN THE LIFE』しか知らなかった、という方々には、これを機に本作や次作『ROAD SONG』、そしてA&M以前のヴァーヴィ時代の作品にも、ぜひ耳を傾けてほしいと思う。

今の時代、音楽情報は氾濫していても、自分のアンテナにヒットするモノは決して多くはない。そしてそれをただ待っていては、出会いのタイミングさえ逸してしまいかねない。自分の嗜好に合ったアンテナ・ショップやキュレーターを持つことは、自身の音楽ライフをバラ色にできるかどうかの分岐点になる。