chicago v

元シカゴのダニー・セラフィン率いる California Transit Authority、通称CTAの来日公演が週明けに迫ってきた。招聘元である Billboard Live / Billboard Japanのサイトでも、カナザワが書いた特集記事に続き、ダニーへのメール・インタビューが公開された(Billboard Japan Special Site へ) 観に行く人はそれを読んで気分を盛り上げて戴き、迷っている人は早いうちに決心して予約を取ってほしいところだ。

かくいうカナザワも、このところ心の準備的にシカゴの初期〜中期アルバムを順に聴き直し中。何せ枚数が多いし、2枚組の大作ばかりだから、外出時も Spotify を使って聴いたり。ブルーノはFMなどで自然に耳に入ってくるから、来日前はアルバム3枚を通して聴いただけで予習を終えたが、CTA/シカゴの場合はそうもいかない

今日聴いたのは、72年の『シカゴ V』。通算5作目にして、初めてのシングル・アルバム。世間的には全米3位になった穏やかなポップ・チューン<Saturday In The Park>で知られる作品ながら、真骨頂たるは組曲風の<Dialogue Part 1 &2>だろうか。ベトナム戦争を背景にした社会メッセージ、リベラル的アピールが初期シカゴの特徴だが、それもこのアルバム辺りが最後。実はその力強さをバンド推進のエネルギーに置換していただけで、特別な政治的信念があるワケではなく、時代の空気を取り込んで問題提議をする程度のコトだった。実際のシカゴは、当時のパブリック・イメージよりずっと音楽的なグループだったというのは、後から次第に分かってくる。そうした意味でこの『CHICAGO V』は、初期集大成であると同時に、ポップ・ロック・バンドとしての彼らの出発点とも言えるだろう。初のシングル・アルバムという買いやすさも相まって、見事に初の全米No.1アルバムに輝いた。

様々な音楽素養を無理にひとつに溶かし混もうとせず、そのままストレートに提示して長尺の組曲にしたためたシカゴ。その混沌とした雰囲気は、いわば時代を象徴する部分でもあった。でも今回このあたりを改めて聴き直して思ったのは、彼らは機を見るに長けていた、ということ。ジャズやソウル/R&B、フォークなどからの引用はしばしば語られてきたけれど、いま自分が感じたのは、ピンク・フロイドやエマーソン・レイク&パーマーに対する意識である。サイケデリックなトライアルの中に、『原子心母』のオーケストレイション、キース・エマーソンのキーボード・アンサンブルをブラスに置き換えたと思しき展開を発見したのだ。当然気づいていた方もいると思うが、自分が知る限り、この辺はあまり語られてこなかった部分。そういえば、ピーター・セテラとグレッグ・レイクって、何処となく似ている気がするな(自分だけ?)

ブラス・ロックの看板を掲げる初期シカゴなれど、実際はテリー・キャスのリーダー・シップが大きかったことは、ウルサ方のファンには周知の事実。その中でロバート・ラムやピーターには話が及んでも、ダニーはどうも軽く見られがちだ。でも初期シカゴの特徴である場面展開が早くてヤヤこしいアンサンブル、時にスウィンギー、時に軽くシンコペイトする多彩なグルーヴは、ジャズ影響下にいたダニーの流麗なドラミングに依るところが大きい。デヴィッド・フォスターをプロデューサーに迎えた彼らは、ホーン隊がシンセの向こうに押しやられたと主張するが、それだけでなく、ダニーの流れるようなスティック・ワークも鳴りを潜めた。そして90年のダニー離脱で、本当のシカゴ・サウンドは封印されてしまった。後任のトリス・インボーデンも大好きなドラマーだけど、正直、初期レパートリーでの存在感は薄かった。

今回のCTAジャパン・ツアーでは、日本の若手実力派がホーン・セクションを務める。つまり、譜面に則った堅実なプレイをしてくれるだろう。その分パフォーマンスの善し悪しはバンド本体に掛かってくるから、とりわけダニーのドラミングが演奏の鍵になる。近年のシカゴが失くしたままのサムシングが、このCTAのステージに見いだせたら、来日公演の意義は更に高まるに違いない。

ビルボードライブ東京 
2018/4/17(火)
2018/4/19(木)
1st Stage Open 17:30 Start 19:00 / 2nd Stage Open 20:45 Start 21:30

ビルボードライブ大阪:2018/4/20(金)
1st Stage Open 17:30 Start 18:30 / 2nd Stage Open 20:30 Start 21:30

[members]
Tony Grant (vo)
Donnie Dacus (g)
Marc Bonilla (g,vo)
Bill Champlin (kyd, g, vo)
Edward Roth (kyd)
Travis Davis (b)
Danny Seraphine (ds)
吉澤達彦(tr)
鹿打奏(tb)
川島崇史(Sax)