positive force

うわっー、コレ出ちゃうんだ

ポジティヴ・フォース feat. デニス・ヴァリン。83年モノのプライヴェート・プレス。音を聴いてブッ飛び、探すとはナシに探していたが、さすがにそんな中途半端な掘り方で出会えるハズもなく…。何せオリジナルは、一体この世に何枚現存しているの?という激レアな皿。しかもDJ発掘にありがちな、ワン・ヒット・ワンダーならぬワン・チューン・ワンダー(って言うのか!?)ではなく、アルバム・トータルで超絶スバラシイ出来なのダ

ポシティヴ・フォースというと、マニアはファンク・バンドの方を思い浮かべる人が多いと思うが、こちらはL.A.の4人組。クロスオーヴァー・フュージョン指向が強いグループで、これが唯一のアルバムらしい。ジャケを見てお分かりのように女性シンガーをフィーチャーしており、タイプとしてはシーウインド、それにCCM系のオメガ・サンライズやタマラック(これらもまたマニアックだ…)を髣髴させる。

メンバーとしてクレジットされているのは、中心人物のスティーヴ・ラッセル(g)とデニス嬢、そしてビル・リストン(sax)とラリー・ケスター(kyd)。79年頃にはこのラインナップでディズニーランドで演奏していたらしいが、ヒット曲を強要されるのにウンザリし、クラブやパブでジャズ・フュージョンやストレート・アヘッドなジャズ、オリジナル曲をプレイするようになったそうだ。アース・ウインド&ファイアー、スティーヴィー・ワンダー、デイヴ・グルーシン、チック・コリア、リー・リトナー、シーウインドにコイノニア(!)あたりが当時のレパートリー。だからこの時期にバンドとしての指向性が定まったと言える。

リズム隊不在ということで、レコーディングにはセッションメンを起用。そこにタマラック出身のジョン・パティトゥッチ(b)に加え、エリック・マリエンサル(sax)までがクレジットされていてビックリ。今でこそチック・コリア・エレクトリック・バンドのメンバーとして知られるご両人だが、コリアがその新バンド結成を目論むのが84年で、1stを出すのが86年。マリエンサルの参加は更にそのあと、2ndアルバムの時からだ。だがパティトゥッチのみならずマリエンサルも、そしてポジティヴ・フォースのリーダー:スティーヴ・ラッセルも、80年代前半はL.A.のゴスペル・シーンでセッション活動をしていたそうだから、そこでこういう人脈が形成されたと思われる。

そのスティーヴ自身のセルフ・ライナーによると、スターターの<You Told Me You Loved Me>にはカーリー・サイモン<You're So Vein>のフィーリングがあるとか。イントロはクリストファー・クロスだけどね。ゴスペル・フィーリングを湛えた<Take Some Time Out>は、アレサ・フランクリンにインスパイアされた楽曲で、ノリは後期ドゥービー調。プレイヤーやアンブロージアを意識したのが<Everything You Do>で、<Put It In The Groove>はタワー・オブ・パワーのへのトリビュートだという。

デニス嬢のヴォーカルは、声を張り上げずにヒラ歌を歌っている時のデニース・ウィリアムスにちょっと似てるか。デニースやポーリン・ウィルソン、アンジェラ・ボフィルのように個性の強いキューティー・ヴォイスなら良かったが、良くも悪くもオトナの成熟した歌声である。かといって色艶で攻めるでもなく、そこはピュアーで実直。<You Gotta Know>のみ男性ヴォーカルになるが、これまたとってもアーバン・コンテンポラリーな出来でヴェリー・ナイス。

リリースは P-VINE の Groove-Diggers シリーズ。こりゃー1本取られたどころか、軽く3〜4本持って行かれましたわ…