syoryo & eve

こそっと紙ジャケで再発されました。惣領泰則& EVEによる81年の共演作『PEYOTE(ペヨテ)』。惣領は、石川セリやピコこと樋口康夫、ベースの原田時芳(=クマ原田)らを排出し、NHKステージ101でも活躍したシングアウト、ドン・コスタに認められて全米デビューし、ポール・マッカートニーからの楽曲提供を受けたブラウンライス、両グループのの元リーダー。70年代後半は帰国して作編曲家として活動、ジム・ロック・シンガーズを率いてリーダー作を出したり、女性デュオ:TINNAを仕掛けている。そうした時のキー・パーソンはいつも奥様;惣領智子(現在は離婚)だが、それをこの時はEVEに替えて制作したのが、このアルバムだった。

EVEは80年にデビューした、沖縄出身の姉妹ヴォーカル・トリオ。10枚前後のアルバムを発表し、87年には浅田飴のCMソング「恋はパッション」がヒット。90年にはNHK紅白歌合戦にも出場している。元々は76年にアップルズとしてデビューしたが当たらず、78年にEVEと改名し、スタジオ・コーラス・ユニットとして再出発。するとズバ抜けた歌唱力と英語の発音の良さで引っ張りダコになり、「1日、多い時は6カ所のスタジオを車で移動」(『ニッポンの編曲家』より)なんてエピソードがあるほど大活躍した。なので名前くらいは、誰でも知っているだろう。メンバーは、レオナ (玲乙奈) 、クララ (久良良) 、リリカ (利里佳) の3姉妹。

どうして惣領とEVEが組むことになったのか、このアルバムの企画や制作目的といった経緯は分からない。何かのレコーディングで惣領がEVEを知り、TINNAとは違うソウルフルで迫力のあるハーモニーに興味を持って1作交えたのではないか?なんて思っているが、ホントの処はどうだろう? ちなみにペヨテとは、ウバタマ(烏羽玉)と呼ばれる幻覚作用を持った棘なしサボテンのこと。またハワイでは、ハングライダー愛好家たちが見たとされる伝説の鳥を指し、それが今作のイメージに繋がっている。歌詞は全編英語で、作詞を担ったビル・クラッチフィールドもまた、シングアウトの元ホーン隊出身。当時から惣領作品にしばしば英詞を付けていた。

対して演奏陣はジム・ロック作品の常連たち、リズム隊には後期ブラウン・ライスと同じ市原康と金田一昌吾、市川秀男/井上鑑(kyd)、穴井忠臣(perc)に、先頃亡くなったジェイク・H・コンセプション(sax)らである。そして内容も、視覚イメージと連動してのコンセプチュアルな作りで、均整の取れたヴォーカルと演奏のアレンジの妙、構成力の見事さが売り。特に後半が印象的で、アコースティック・ギターで始まる<Tremble With Delight>は、飛翔感いっぱいの爽快グルーヴ・チューン。<Sweet Mariah>やバラード<Sail Me Away>にも優れたメロディ・センスが覗いている。

サントラ『POLE POSITION』はリリース済みだけれど、他のジム・ロック作品やTINNAのリイシューが遅れていて、今ひとつ再評価が進まない惣領。確かに通好みの面はあるけれど、このまま埋もれさせてはイケない人だと思うです。