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既報の通り、また一人、日本のレジェンド・ミュージシャンが旅立った。ザ・スパイダース、沢田研二と萩原健一が組んだPYG などで活躍したギタリストの井上堯之が、この5月2日に亡くなった。死因は明らかにされていないが、非常に元気で、最近も3ヶ月に1度の割でライヴを行ない、次回は6月に予定されていたという。それが急に体調を崩し、2〜3日前に入院。そのまま帰らぬ人になった。享年77歳。

個人的にはやはり、井上堯之バンドとして沢田研二のバックを務めたり、TVドラマ『太陽にほえろ!』『寺内貫太郎一家』『傷だらけの天使』などのテーマ曲を手掛けたことが印象深い。歌謡曲系の歌番組ではビッグ・バンドがハコバンを務めるのが一般的だったが、沢田研二が自前のバック・バンドとして井上堯之バンドを重用。それを機に、歌手が自分のバンドを引き連れてTVに出演することが増えていった。そう、日本の音楽界で専任サポート・バンドのあり方を変えたのが、この井上堯之であった。<危険なふたり>や<勝手にしやがれ>での名サポートぶりは、未だに脳裏に焼き付いている。

その勢いもあったのか、76年に初リーダー作『WATER MIND』を発表。その後も『DON'T DRINK MY WATER』『ON THE BOAT』とソロ作品を続けた。この『IT'S NEVER TOO LATE』は81年の発表。英国録音で、バックはブレックファースト・バンド、ゲストにミック・テイラーが4曲という布陣で作られている。ブレックファースト・バンドには、シングアウト出身で単身ロンドンで活動を続けていたクマ原田(b / Co-Produce)と、ゴンザレスやジェフ・ベック『BLOW BY BLOW』で有名なリチャード・ベイリー(後にインコグニート)が在籍。これはミック・テイラーがストーンズ脱退後に作ったソロ作(79年)を、その辺りのメンバーで作っていた縁だろう。

当時もその後もあまり話題にならなかった盤だが、ヘタウマだけど熱い歌に味があり、個人的には井上堯之ソロの中で一番愛着があった。一時、引退宣言して活動を休んだが、それも「自分が思ったようにギターが弾けない」という職人ならではの真摯な姿勢から出たもの。そういう気骨を感じさせる人だった。

Rest in Peace...