circus_pop step

6月の "LIVE Light Mellow" にご出演いただくサーカスの新作。コレが結構ヤバイことになっているのをご存知か? 元からポップス系コーラス・グループとしてハイ・ファイ・セットを追うように登場し、ファースト・アルバム(78年)で早々に<夢で逢えたら>と<ケッペキにいさん>という吉田美奈子のレパートリーを同時カヴァーしていた彼ら。そのセンスと力量はまさに本物だったが、ヒット曲の連打でお茶の間に指示を広げた結果、図らずもムード歌謡的な<ミスター・サマータイム>のイメージが先に定着してしまい、そこから抜け出せなくなってしまった。全盛期の血縁編成が分裂して若返りを図って数年、路線を変えることは叶わなかったが、40周年のココへ来て一気に勝負に出た感がある。

それがこの新作『POP STEP 40』。通常盤『POP STEP 40 ~Futur』は白いジャケだが、赤ジャケの初回限定盤『POP STEP 40 ~ Histoire et Futur』は2枚組で、1枚は19曲収録のオール・タイム・ベスト。でもそれがシングル曲や人気曲を集めた ありきたりのベスト盤ではなく、新作『〜Futur』の方向性と連動した、攻めの自選セレクトになっている。レコードコレクターズ誌5月号に掲載されたインタビューによれば、今の時代に響く発信力を考えながら、「若い世代、たとえば DJさんとかに “おっ、これいいな” って言ってもらえるように編集したつもり」とか。

ウン さすが、若いメンバーは分かってらっしゃる。そこにグループの将来を委ねた年長組の英断も鮮やかだ。そもそもレココレ誌とサーカス、という組み合わせに驚いた人も多かったと思うが、前2号がシティ・ポップス特集だったことを考えば合点が行く。逆にサーカスの初期アルバムが特集名盤選から洩れてしまった点に、彼らが置かれたポジションの難しさが映し出されていた気がする。

ホントは、2〜3年前の拙監修【Light Mellow 和モノ】コンピ・シリーズでアーティスト物を手掛けた時に、『Light Mellow サーカス』を組めたらなぁ〜、と思っていたが、オトナの事情で実現せず…。そもそも【Light Mellow 和モノ】では、04年のガイド本初版の時点から、サーカスには1ページ割いてプッシュし、「サーカスは侮れません!」と書いていた。だからこの新作は、それを彼ら自身の手で証明してくれた気がして…。LIVE Light Mellowの出演者を決める際にも、ある筋から「サーカスがシティポップス路線で新作を作っている」と推薦され、その後 完成した新曲の音源を聴いて、「ヨシッ!」と小躍りした。

…というワケで、40周年記念の新作。実は、デビュー・ヒットと思われがちな<ミスター・サマータイム>の前に、全盛期とは異なるメンバーで1枚シングルを出している(とはいえ両面とも南佳孝楽曲)ので、正確には41周年になるが、まぁ、細かいコトはイイでしょう。とにかくココで重要なのは、彼らがこれまでのキャリアを踏まえた上で、未来に繋がる現在進行形のシティ・ポップスを創造したこと。昨今の若手が、何処か70〜80年代的なエッセンスを孕んだ都市型ポップスを今の形で提示しているのに呼応し、サーカスはそれをベテランの流儀と多彩な表現力で料理している。若手に比べて実力と経験が豊富だから、どうしたって円熟の方向に進みがちだが、それをリフレッシュしているのが若い2人。数年前のメンバー交代がココへ来て大きく花開いた、といってイイだろう。

プロデュースはユーミンでお馴染みの武部聡志。絶妙なバランス感は、彼の手腕に拠るところが大きい。売れっ子ソングライター:マシコタツロウの起用、一十三十一やSaigenjiをサポートしている南條レオのアレンジもあれば、如何にもサーカスらしい森山良子提供曲もある。個人的に一番滲みた<Never Forget>のkydがイイなぁ…と思ったら、あらま、顔見知りでAOR好きの宮崎裕介クンだし、少し前に解説を書いた新人ソングライター:星野裕也も、作詞でちょっと協力していた。

かつて大ヒットを飛ばしたベテラン勢には、その恩恵に預かりながらも、一方でそのイメージに縛り付けられてしまう人が少なくない。寄せる期待に応えながら、適度に裏切っていくのが理想的だが、その匙加減が難しいのだ。それでも、ある程度の批判は覚悟の上で開き直ってトライしないと、前に進むことはできない。守りに入ってしまったら、ジリジリ後退させられるのが世の常。ようやく新しさを前面に打ち出したサーカスには大いにエールを送りたいが、時流を味方につけた今の彼らなら、もっともっと思い切ったことができるはずである。早くも次作が楽しみになってきたナ。