leo sidran_cool sch.
先日、23日に日本先行リリースとなるマイケル・フランクス『THE MUSIC IN MY HEAD』をご紹介したが、そのポストでちょっと触れたリオ・シドランのマイケル・カヴァー集『COOL SCHOOL – The Music of Michael Franks』が届いたので早速。リオがベン・シドランの息子なのは誰もがご存知と思うけれど、ドラマー出身ながらも今ではすっかりマルチ・タレントを発揮し、ベンのソロ活動やレーベルを支える右腕的存在に成長している。親父ベンとマイケルは、マイケルの83年作『DRAGONFLY SUMMER』で2曲、ベンがプロデュースを担当した縁もあるけれど、そもそもこの2人、故トミー・リピューマを介して かなり近い間柄だった。だからマイケルは、リオを幼い頃から知っていたのだ。

一番きになるカヴァー集の収録曲は、以下の通り。ボーナス・トラック扱いのラスト<Easy>だけが、リオの書き下ろしになる。

 1. Monkey See Monkey
 2. Your Secret's Safe With Me
 3. The Lady Wants to Know
 4. When The Cookie Jar Is Empty
 5. Antonio's Song (Featuring Leo Minax & Olivier Ker Ourio)
 6. The Cool School (Featuring Michael Franks)
 7. Lotus Blossom (Featuring Clementine)
 8. Popsicle Toes
 9. Sometimes I Just Forget to Smile
10. Wrestle A Live Nude Girl
11. You Were Meant For Me
12. Easy (Featuring Jorge Drexler)

オランダの新人ティム・トレファーズも歌っていた<Monkey See Monkey>のファンキー・カヴァーに始まり、少しテンポを落とした中期名曲<Your Secret's Safe With Me>、ド定番<Antonio's Song>や<The Lady Wants to Know>、<Popsicle Toes>から、比較的新しい『RENDEZVOUS IN RIO』(06年作)からの<The Cool School>まで。以前も触れた通り、このタイトル曲にはマイケル自身がゲスト参加。当人がオリジナルで “僕はモーズ(アリソン)やチェット(ベイカー)を聴いて育った、古くさい男” と歌うところを、ココではリオが “僕はベンやフランクスを聴いて…”と替え歌にし、“僕はクール・スクール最初の卒業生” と胸を張る。<You Were Meant For Me>は、前述『DRAGONFLY SUMMER』でまさにベンがプロデュースした楽曲。オリジナルはペギー・リーとマイケルのデュエットだったが、今回はフランスの中堅ジャズ・シンガーを起用した。

既にポップ・スタンダード化した感のある<Antonio's Song>では、スペインはマドリードを拠点に活動するブラジル・ミナス出身のジャジー・ポップなシンガーソングライター:リオ・ミナスをゲストに、スペイン語の詞を交え…。“スペインのジェシー・ハリス” とも謳われる彼は、日本のブラジル音楽ファンからも注目される新鋭で、既に日本でのライヴも行っている人である。更にココではもう一人のゲストに、“トゥーツ・シールマンスの唯一の後継者” と評判を得るフランスのジャズ・ハーモニカ奏者オリヴァー・カー・オゥリオを迎え、定番曲も当たり前にはカヴァーしない。また静謐の名曲<Lotus Blossom>のゲストは、ベンともデュエットしていたクレモンティーヌ。この辺り、ワーナー・スペインが今作を欧州向けにリリースしている(原盤は親父ベンの Bonsai Music) ので、それを睨んでのキャスティングではないかと思われる。

ザッと見たところ、馴染みのある参加ミュージシャンは、ベン・ファミリーのリッキー・ピーターソン(kyd)、スティーリー・ダンで知られるマイケル・レオンハート(tr)くらい。でもまぁ、楽曲が楽曲なので、そこはあまり気にならない。

対して、これまでに出たマイケル・フランクス・カヴァー集というと、英シンガー・ソングライターのゴードン・ハスケル(元キング・クリムゾン)や、マイケルのツアーでコーラスを取るヴェロニカ・ナンの作品がある。でもどれも近いイメージで統一され、クオリティも一定レヴェルを堅持。それはきっと、ただマイケル作品を愛しているだけでなく、彼の楽曲に宿っているインテリジェンスやユニークさを、それぞれが深〜く理解し、広く伝えようとしているからに違いない。もちろんリオの最新カヴァー集も然り。マイケル愛好家は、彼のニュー・アルバムと併せ、是非コチラもチェックしてほしい。