reacord collectors 2018.6

レコード・コレクターズ誌6月号メイン特集『セッション・ギタリストの名手たち』、ディープに協力させて戴きました。絡んだのは、特集の根幹を成す『セッション・ギタリスト名鑑』の人選と執筆。70年代の米国のスタジオ・シーンを舞台に活躍した職人たち94人が掲載されていますが、ルーツ系やアメリカン・ロックにお強い宇田和弘さんとカナザワがその候補をリストアップし、我々を含む11人の執筆陣が手分けして紹介しています。ちなみに自分が担当したのは16人。頭割りより多いのは、他のライターの皆さんが書きにくいのは、どうしても選者に回ってくるため。だから著名どころは他の方に任せ、ほとんど無名どころばかり書いてます

「えー、でもマイケル・センベロとかポール・ジャクソンJr.、ハイラム・ブロックとか書いてるぢゃん!」
既にお読み戴いた方からは、そんな声を頂戴しそう。でも今回の特集は70年代限定。だからマイケル・ランドウもダン・ハフも対象外なのだ。センベロで言えば、<Maniac>のヒットが83年。70年代なんて、まだまだ一介の名もなきセッション・ギタリストに過ぎなかった。ハイラムもニューヨークに出てきたのが77年くらいで、24丁目バンドが79年とか。ポール・ジャクソンJr.は、カナザワが意識するようになったのは81年頃だったな。

でもこうして100名近いギタリストを眺めてみると、ほとんど名前を聞いたことのない人や、名前だけは知ってても正体不明な人が若干いる。要するに自分が積極的に聴いていない、ジャンル違い、畑違いの人。これはまぁ自分の勉強不足で仕方がないな。でも自分でリスト化した無名の達人たちを己で執筆することになって、資料集めに結構苦労した。ネットを徘徊すればそれなりに分かるけれど、ネット情報はいい加減な記載が少なくないので、裏を取らないと怖い。しかも気をつけないと、元ネタの出処が同じだったりする。やはり最後に頼れるのは、自分の手持ちのレコードやCDのクレジット。やはりこの仕事、ストリーミングや配信では成り立たない。

…と同時に、こういう特集は、知識欲のある人にとってはとても貴重なモノとなる。この曲とあの曲、同じギタリストが弾いてたんだ、なんて発見が、音楽を深く聴く醍醐味、面白さを教えてくれるのだ。そもそもクレジット買いというのは、優れたレコード、自分の好みに合う作品を見つけるための手段のはず。買い物に失敗しないためのツールだったのだ。それが転じて、ご贔屓のプレイヤーが参加した作品を蒐集するようになっていく。でもそういうミュージシャンが大挙して参加しるアルバムなら、どうしたって聴きたくなるのが人情。ストリーミングの時代になって、データが見られなくなるのは、良質な音楽に辿り着く辞書をひとつ失くしたに等しい。

今回の特集の起点は、ダニー・コーチマー&フレンズの新作&来日。そのニュー・アルバムのポストはこちらをご覧いただくとして、ダニー御一行様は Billboard Live Tokyo での公演とは別に、6月20日にZepp Tokyo で、五輪真弓、奥田民生、小坂忠、佐橋佳幸らと共演ライヴ【West Coast Sound Summit】を行なう。実はこのイベントの命名はカナザワ。ダニーの新作のリリース元が、長きに渡って Light Mellow's Choice シリーズを展開してくれてる Vivid Sound Corp.であるのがご縁だが、思いつきで言ったのが「分かりやすい!」というコトで採用になった。うわー、光栄です

でも、こういうギタリスト特集と時を同じくして、老舗ギター・メーカーのギブソンが倒産というのも皮肉な話。とりあえず、事業自体は継続されるそうなのでひと安心だけれど、聞けばギター部門は赤字ではなく、事業拡大で手を広げたところが負債を抱えたらしい。うーむ、コレって斜陽の音楽産業を象徴する事態だと思う。要するに、音楽をおざなりにして会社の利潤追求に走ったら、元も子もなくなる、というコト。今の業界は、イイ音楽を作って、それが売れた結果として儲けを出すのではなく、利益のために音楽の粗製乱造を繰り返している。将来の10万より目先の1万に目を眩ませる。これでは、記録には残っても記憶に残る音楽は作れない。ギターもCDも売れなくなるワケだ。

音楽は文化か、ビジネスか。そのバランスの取り方で、共鳴できるかできないかが変わるだろうな。