frank weber

AORファンにはお馴染みであろうニューヨークのシンガー・ソングライター、フランク・ウェーバーが来日中。とはいえライヴを演りに来たのではなく、完全にプライヴェート。それでも彼は来日のたびに連絡してくれ、じゃあディナーかランチでも、という流れになる。今回も滞在している新宿の某ホテルで待ち合わせ、関係者4人でランチすることになった。

フランクは78年と80年に米RCAから2枚のアルバムを発表し、7年前には30年ぶりに作った3作目『BEFORE YOU』を、我が【Light Mellow's Choice】からリリースしている。前回日本へやって来たのもその前後。彼はいまサイコセラピストとして働きながら、たまにニューヨーク界隈のジャズ・バーで歌う暮らしを送っていて、デビュー・アルバムに参加していたギタリストのジョン・トロペイやその周辺とは、今も付き合いがあるらしい。

フランクの音楽をひと口で言い表すと、ほんのりジャズ・テイストを絡めたピアノ系シンガー・ソングライター、と言えるだろう。当時は売り出し方に困った日本のレコード会社がビリー・ジョエルを引き合いに出し、フランクの名がそのまま原題になっているこの2ndに、『ニューヨークのストレンジャー』という邦題をつけた。まぁ確かに『THE STRANGER』でブレイクする前のビリーの作品とは、若干近いニュアンスがある気がするし、少し鼻にかかった歌声も似ているが…。フランクもそれを知っていて、しかも面白いエピソードとして、当時のビリーのマネージャーがフランク・ウェーバーという同名異人で、勘違いされたことがあったという話を教えてくれた。

セラピストなので話が豊富で内容は知的。音楽ビジネスとか政治的な話など、会話は多岐に及んだ。今もジャズ系のアルバムを作るべく、ぼちぼちと録音を進めていて、1曲ファイルで送ってくれた。イメージとして彼の口から頻繁に飛び出してくる名は、故ケニー・ランキン。「ちょうどマイケル・フランクスが久々にアルバムを出したので、日本リリースを手伝った」というと、「新作? 彼もまだ歌っているんだね」と興味深そう。「君のアルバムに参加してたデヴィッド・スピノザがギターを弾いてるよ」と教えると、嬉しそうに微笑んでいた。タイミング良く、RCAからの2作は今、ソニー・ジャパン【AOR CITY】シリーズで廉価でゲットできる。

フランクは翌日には京都へ行き、そのあと再び東京へ戻って小野リサのライヴを観に行く予定とか。特に彼女の09年作『LOOK TO THE RAINBOW』がフェイヴァリットで、そこに共同プロデューサーとして関わるビル・カントスの仕事ぶりに感銘を受けているらしい。「トシはビル・カントスのこと、どう思う?」と訊かれたので、「今はセルジオ・メンデスとの仕事で有名だけれど、日本のAORファンはみんな彼のことを知っているよ。初めて彼のソロ・アルバムを出したのは、日本だったしね。インタビューしたこともある。CCMのアルバムも出しているよね」と答えたら、「さすがトシ。よく知ってるね。GREAT!」と握手を求められた。

日本へ来て、すかさず小野リサのライヴをチェックするあたり、フランクは本当に真面目で音楽愛に溢れた人。新作では1st『AS THE TIME FLIES...』に収録されていた<I Know, You Know>をジャズ・アレンジで歌うつもりと聞いて、小さくガッツした。実はその曲、フランク楽曲でカナザワのフェイヴァリットのひとつなのだ(音がないので、もろスタッフなのを貼っておきます)。多少時間は掛かるだろうが、ひとまずニュー・レコーディングの完成を楽しみに待っていたい。