camel_moonmadness tour
締切テンコ盛りの中、すべての仕事をうっちゃって、叙情派プログレ最高峰であるキャメル『ムーンマッドネス』ツアー2018@クラブチッタ川崎4daysの最終公演へ行ってきた。ビートルズで洋楽に入り、本格的にロックを聴き始めて間もない頃に代表作『THE SNOW GOOSE』を聴き、どっぷりハマってしまったキャメル。普段はAORとか都会派を気取るカナザワ(←ホントかッT)も、昔はハード・ロックやプログレ好きのロック小僧なワケで。それを知ってるひと握りの業界人が仕事を振ってきて、実はキャメル関連でも故ピーター・バーデンスのソロ作や、キット・ワトキンスがいたハッピー・ザ・マンのライナーを書いたことがある。

さて、そんなカナザワがキャメルで一番好きなスタジオ・アルバムというと、実はポール・ギャリコの短編小説を題材にした代表作『GOOSE』ではなく、その次に出したこの『MOONMADNESS』。ここには『GOOSE』の魅力の美味しいところが切り取られて入っているし、それ以前の初期テイスト、逆にその後キャメルが向かうクロスオーヴァー・ジャズのテイストも、バランス良くブレンドされている。

それを完全再現するのが、今回の『MOONMADNESS』ツアー。2年前の『RED MOON RISING TOUR in JAPAN 〜一期一会〜』@六本木EXシアターは、骨髄性線維症で再起不能と言われた中核アンディ・ラティマーが奇跡の復活!ということで、矢も楯もたまらずに足を運んだ。その時ポストにも書いたが、ラティマーのソロ・プロジェクトと化してからのキャメルにはずっーと不満を持っていて、ライヴにも行ってなかったが、ラティマー帰還後のキャメルはなかなか良く、主要レパートリーにも往年の楽曲が幅を効かせていた。

そのキッカケを運んだのが、盲目の鍵盤奏者ポール・ジョーンズ。彼はキャメルの昔の楽曲をとても熱心に研究していて、シンセのトーンやフレーズなども、かなり忠実にオリジナルを再現してくれる。しかもサックスも吹けるし、ヴォーカルだってナイス。アンディもコリン・バースも歌うけど、一番声が伸びるのがポールで、リード・ヴォーカルも最も多くチョイとビックリ。もちろん3声のハーモニーを聴かせる場面も用意され、本当に現行キャメルの秘密兵器といってイイ。例えばジャーニーに於けるアーネル・ピネダ、イエスのジョン・デイヴィソンみたいに、老舗バンドが往年の輝きを取り戻すキッカケになっている。

序章の<Aristillus>が流れる中、メンバーがスタンバイ。学生時代にさんざんコピーしてた<Song Within a Song>からの演奏スタートに、思わず目頭が熱くなりかけたが、「あぁ、2年前も演ってたじゃん」と思い直し、ちょっと冷静になれた。記憶を辿って数えたら、音源が流れた<Aristillus>を除いた収録曲6曲中4曲は、2年前にも日本で演奏していたはず。それでも初披露の<Chord Change>の美しいギターには、また万感迫ったりして…。ピンク・フロイドっぽいと言えば確かにそうだけど、やはりラティマーはデイヴ・ギルモアより巧いし、エモーショナルに弾く。ほぼアルバム通りのアレンジが多い中、やはり初披露となった<Another Night>は、ややハード・ロック寄りのアレンジに意表を突かれた。でもシメの2曲は期待に違わず。やっぱり変拍子上で繰り広げられる<Lunar Sea>のインタープレイは壮絶です ふと気づけば、前半はひと言のMCもなく、ただアルバム通りの曲順で淡々と進んだ印象。「アリガトゴザイマス! See you soon」とだけ告げて、インターヴァルに入った。

2nd Setは、思わずズリッとくるような初期曲<Mystec Queen>からスタート。ところがワンコーラスやったところで、どうも耳馴染みのない展開になり、ジェネシス風の緻密な三連アンサンブルに変わっていく。後で知ったが、コレはどうも新曲だったらしく、その冒頭に<Mysic Queen>を用いたよう。もしくは<Mysic Queen>のアタマをモチーフに、別の曲へと繋げていったのか。しかしそんなモヤモヤを吹き飛ばすが如く、コールされたのが<Unevensong>。これもかつて散々コピーした曲なので、エア・ドラムなら今でもすぐ叩ける(ただし手足は動かない)。デニス・クレメントもほぼ原曲に忠実なドラミング。スタジオ盤のエンディングはラティマーがギター・ソロを5〜6本くらい重ねていて、リフを繰り返すうちに次々擦り変わっていくが、ライヴ・ヴァージョンではそれを3パターンほど披露してアドリブに突入した。エンディングは70年代のライヴのまま。あぁ、感動の嵐 ちなみに2年前は聴けなかった<Hymn to Her>も、ほとんど脳内ドラムが叩けました

あまり動きもなく淡々としていた1st set に比べ、自分たちのやりたいことができる2ndでは、メンバーの表情もイキイキとして見える。…というか、ラティマーが一人で歩き回ってコリンに近寄ったり、顔をひしゃげて表情豊かにギターを弾いたり。コリンのベース持ち替えの頻度も上がり、フレットレス・ベースのようなトーンの個性的プレイが随所に。プレイしたのは90年代のアルバム『DUST AND DREAMS』や『RAJAS』からの楽曲が多かったが、この辺りはCDは持っているものの、聴き込み不足でどれがどれやら分からない。確かにラティマーの個性は健在だが、やっぱりリズム・アンサンブルや構成がイエス風だったりジェネシス風だったりで、変拍子を流れるように聴かせる70年代のキャメル・マジックには出会えなかった。それでもピート・ジョーンズが主導したと思われる新曲<Dingley Dell>は、結構な力作だったな。

前日アンコールでステージに掛けられたらしい<Rhayader / Rhayader Goes To Town>は、この日は演らずに<Lady Fantasy>で幕。オリジナル・メンバーがラティマー1人という現体制に初期キャメルを求めるつもりは毛頭ないが、ほぼソロ・プロジェクトと化していた80〜90年代の彼らになかったグループとしての一体感が、今のキャメルに蘇っている。それがあってこそ、バンドとして新しい歴史が刻めるワケで、これからのキャメルには期待したい。

今回は大学時代の後輩にチケットを確保してもらったので、お礼に地元で一杯。酒が進むうち、高校時代に冬休みの宿題として出された書初めで『月夜の幻想曲』(『MOONMADNESS』の邦題)と書き、現国のセンセイに妙に気に入られ、何処かに出品されたことを突然思い出した

[ 1st Set ]
~ intro ~ Aristillus
1. Song Within a Song
2. Chord Change
3. Spirit of the Water
4. Another Night
5. Air Born
6. Lunar Sea
 [ 2nd set ]
7. Mystic Dreams
8. Unevensong
9. Hymn to Her
10. Rose of Sharon
11. Coming of Age
12. Rajaz
13. Dingley Dell
14. Ice
15. Mother Road
16. Hopeless Anger
17. Long Goodbyes
-- Encour --
18. Lady Fantasy