rita coolidge 018

リタ・クーリッジといえば、71年にソロ・デビューした超ベテランの女性シンガー。その長いキャリアゆえに音楽性にも多少の変化があって、時代によってイメージが変わる。元々はジョー・コッカーやデラニー&ボニー、レオン・ラッセル周辺のスワンプ人脈に連なり、 “デルタ・レディ” と呼ばれて、エリック・クラプトンとも共演した。その後クリス・クリストファーソンと結婚し、ポップ・カントリー系夫婦デュオとして活動。ソロでは、日本で彼女の代名詞となった<あなたしか見えない(Don't Cry Out Loud)>をヒットさせている。離婚後はMOR志向を強め、ジャズやポップスのスタンダード・カヴァー作を発表。05年にジャズ・アルバム『AND SO IS LOVE』を出した時に来日し、インタビューさせてもらったが、チェロキー・インディアンの血を引く彫りの深い顔立ちと、聡明なキャラが印象的な女性だった。

さて、この久々のニュー・アルバム。調べたら、12年に自主制作クリスマス・アルバムがあったようだが、一般レヴェルではその05年作以来、実に13年ぶりの新作となる。でもコレが少し初期に回帰したようなポップ・ロック作で、なかなか良いのだ。

基本的に4人組バンドを率いてのレコーディングで、メンバーには、ジョン・メレンキャンプやジェニファー・ウォーンズ、ベス・ニールセン・チャップマン、ディキシー・チックス、それにリンゴ・スターやジョン・メイオールとも共演しているギターのデヴィッド・グリッソム、ベースには名手ボブ・グラウブがいる。

そしてそこに乗る形で大フィーチャーされるのが、ケブ・モーと、カナダの新生オルタナ・カントリー・バンドとして注目されるブラザー・ランドレスのジョーイ・ランドレス。それぞれ複数の曲で曲作りから参加しており、もしかしてリタはこの2人と演りたいがために、遠ざかっていたアルバム制作に乗り出したのでは?なんて思わせる。とりわけ耳を奪われたのは、グレアム・ナッシュとラス・カンケルが共作した<Doing Fine Without You>に於ける、ジョーイの引き摺るようなスライド・ギター。最初に聴いたのはクルマを運転しながらだったから、あたしゃ「コレはもしかしてジョー・ウォルシュか」と思って、すぐさまクレジットを確認してしまったよ。ケヴ・モーは、<Walking On Water>でのデュエットがイイ感じ。何処かボニー・レイットを思い出させる。

他にも職人ティム・ピアースが的確なサポート・ギターを弾いていたり、ドゥービー・ブラザーズのジョン・マクフィーの名があったり。楽曲提供にもスタン・リンチ、クラプトンに<Change The World>を書いたゴードン・ケネディ&ウェイン・カークパトリックらが参加している。

そしてこうした参加メンバーのラインナップが、そのままアルバムの音楽的方向性を示していて。つまり、リラックスした現代版 L.A.スワンプ × ポップ・カントリー作品というか。初期リタ作品のようなルーズ感は乏しいが、スライドやアコースティック・ギターの乾いた鳴りが気持ち良く、そこに大らかなリタのヴォーカルが乗る。最近のアーティストに喩えるなら、それこそテデスキ・トラックス・バンドのヴォーカル版とでも言えそう。

リタ姐さん、完全に見くびってましたわ。失礼シマシタ…