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ブルー・ペパーズ『Retroactive CD& LP リリース記念ワンマンライヴ』@目黒Blues Alley Japan に参戦。リハーサルにも誘われていたのに、時間が作れず涙を飲んだが、綿密に3度もリハーサルを重ねて挑んだ入魂ライヴなだけに、これまでのステージから一段ステップアップした姿を観ることができた。福田の『YOUは何しに日本へ』出演効果か、普段は楽屋に使われるスペースを開放してもまだお客さんは収まり切らず、立ち見も相当数 出る満員御礼状態。ブルースアレイで学割が利くというハコ始まって以来の試み(多分)も効き目アリで、相変わらず平均年齢の高いオーディエンスながら、3割程度はメンバーと同じ若い世代のリスナーが集まっていたようだ。

メンバーは中核2人:井上薫(kyd)&福田直木(vo)に加え、準レギュラー的存在の佐々木詩織(vo, cho)、次第にレギュラー・ゲスト化してきた星野みちる(vo,cho)、そして外園一馬(g)、高木大輔(g)、川内啓史(b)、伊吹文裕(ds)という若き手練れたち。昨年10月の銀座ヤマハ・スタジオでのライヴ以来となるベスト・メンバーが揃った。みんな20代〜30代に手が掛かるぐらいの年齢なのに、既にセッション・シーンでは引っ張りだこ。彼らの活躍がスタジオ・シーンの世代交代を進め、これからの音楽シーンを影から支えるのは間違いない。スタート少し前にバックステージを覗いたけれど、ランクアップした今日のライヴにも臆することなくなく、割とリラックスして出番を待っていた。

定刻10分押しでスタートしたショウは、お馴染みのポップ・チューン< 秋風のリグレット>から。…とはいえ流石に少し緊張していたか、福田の歌い出しは声の出が今イチ。それでも曲が進むに従って喉が開いてきたようで、まずは無難な滑り出しとなった。対してバンドはノッケから飛ばし気味。が、2曲目< 八月の影法師>でいきなり頭が合わないトラブルが発生。でもリ・スタートはまったく問題なく、むしろ要らん力が抜けて気持ちがほぐれたか、程よいグルーヴでしなやかに本領を発揮し始めた。

3曲目、7インチ・シングルに切られた<ずっと>から、佐々木詩織チャン登場。「今日はなかなかセクシーな衣装で…」「コラコラ、最初からヤメなさいって!」みたいな笑えるMCで迎えられる。そういえば、凸凹MCも凸凹なりに面白くなっていたな 詩織ちゃんのヴォーカルは、ユーミンのコーラスに抜擢されただけあって、もう無条件降伏。R&B系ディーヴァのように無駄な抑揚をつけるでもなく、悪戯に子供っぽく見せるでもなく、無垢のキュートさとオトナの女性の香りが自然に入り混ざった、まさに等身大の歌表現が素晴らしい。ブルー・ペパーズの2人だけでは出し得ない色が、彼女によってもたらされている。実は本番前の楽屋で顔を合わせた時、「詩織ちゃん、(アナログ盤の)ライナーでイジっちゃってゴメンね〜」「もー、ビックリしましたよォ〜 “ねぇ、どこへ行くの? 〜どこでもいいよ、カオル君と一緒なら” でしたっけ? もう笑った笑った」なんてやりとりがあり…。観に来てらしたお母様:佐々木久美さんにも「スミマセン、詩織ちゃんを出汁にしちゃって…」と謝ったところ、「イヤ、ウケましたヨ、サイコー 構わないから、どんどんイジってやって」とお墨付きを戴いた

もちろん他のメンバーも最高のプレイを提供する。グルーヴ一徹の伊吹クンは、カナザワ大のお気入りの若手ドラマー。啓史クンのベースは重量感があってシュア。高木君は若いクセに燻し銀のブルージーなギターが十八番で、特にアコースティック系のバッキングに妙味を見せる。そして今や若手ギタリストNo.1の呼び声高い外園クンは、ラリー・カールトン顔負けの青天井プレイ。ソロを取ると流麗なフレーズが際限なく飛び出し、瞬く間に高みに昇っていく。しかもいつもニコニコ屈託のない笑顔で楽しそうに、でも相当にえげつないフレーズを次々繰り出してくるから、もう手に負えない。この2人のギター・コンビネーション、ブルー・ペパーズには今や不可欠のモノになりつつある。

こうした先輩格のミュージシャンたちを仕切る井上は、もう天才肌といってイイかも。kydの腕前もさることながら発想が自由で、ヤンチャな毒と知的センスが抜群のキレで迫る。どうしても音に耳が行きがちだけど、彼には歌詞にこだわる一面も。それが<秋霜>あたりの楽曲によく表れている。相方:福田は、逆に研究家肌でマニアック。エルダー・ファンを集めるのも、彼のAOR愛に共感する人が多いのが理由のひとつだ。そして井上も福田も共にコダワリ派ながら、それぞれ目指す音に行き着くまでのプロセスが違うから面白い。その辺りの話は、20日に発売されるガイド本『Light Mellow 和モノ Special』の増刷記念小冊子にインタビュー掲載したので、そちらも要チェックを。福田のヴォーカルはまだ発展途上だけれど、声にずいぶん伸びが出てきたので、歌い込めばもっと良くなるだろう。

インターヴァルを挟んでの2nd Setでは、安部恭弘『SLIT』から<My Dear>でスタート。これが彼らのオリジナル楽曲と完璧に馴染んでいる。そしてココで星野みちるチャン登場。出演者ではほぼ最年長なのに、まるでマスコットのようなキャラとふわふわしたトークでスッカリ場を和ませる。歌うはもちろん、『RETEROACTIVE』でみちる嬢がリード・ヴォーカルを取る<コバルトブルー>。そしてみちる嬢のアルバム『黄道十二宮』にブルー・ペパーズが提供した、アル・ジャロウ憧憬チューン<気がつけば Looking for your love>。そして圧巻は、今井美樹『Be With』からの<今日 私はひとり>のカヴァー。楽曲そのものがスティーリー・ダン・オマージュなので、相性の良さにはそれこそ一分の隙もない。とりわけココでの外園クン、完膚なきまでの昇天プレイに口あんぐり。みちるチャンの声のハマリ具体もヴェリー・ナイスで、カワイイ歌い口ながら、意外にも伸びのある歌声(失礼)に驚いた人も多いんじゃないか。彼女は自分で曲も書けるし、元AKBにもチャンと音楽の才を持つ人はいた、ってコトです。

そして大詰めは、2人が “ライヴでは再現できないんじゃ…” と危惧していた<サーチライト>。やはりそれだけ演奏陣のスキルの高さを問われる曲なのだが、リハーサルで案外サクッとできてしまった、とのこと。本当にスゴい若手だわよ、コヤツらは。もちろんココでも外園クン爆裂。ソロが終わった瞬間、ホントにため息が出てしまった そして本編ラストは、すっかり代表曲となった<六月の夢>。再びヴォーカルを取る詩織ちゃんには、ちょっと風格見たいなモノを感じたり…

アンコールは、2人がエレクトリックリボンに楽曲提供したブギー・チューン<その風のKISS>、以前詩織ちゃんのソロ・ライヴに福田がゲスト参加した時に2人でデュエットして、それが滅法良いデキだった<渋谷で5時>(オリジナルは鈴木雅之& 菊池桃子)、そしてラストにオーディエンスと一緒に大合唱できるラテン・チューン<汗は甘い口づけ>。終盤のドラム・ソロでヤンヤの喝采が沸き起こるあたり、オーディンスの音楽IQも高いなぁ。

デビュー直後はライヴを演ることなどまったく想定外だったブルー・ペパーズが、少しだけ先輩格の若手ミュージシャンたちの胸を借りつつ、このレヴェルにまで到達したことは、彼らをデビューに導いた者として本当に喜ばしく、同時に誇らしくもある。ま、その後は宣伝に協力する程度だけどネ この日先行発売されたアナログ盤も飛ぶように売れていたし、サインを求める長蛇の列に驚いたりも。本人たちも気を良くしているようで、年内にはシングルくらい作って、次のライヴを仕込みたい意向のようだ。

【Set List】
<1st set>
1. 秋風のリグレット
2. 八月の影法師
3. ずっと feat. 佐々木詩織
4. ふたりの未来 feat.佐々木詩織
5. 面影
6. さみだれダイヤリー
7. 秋霜
<2nd set>
8. My Dear(安部恭弘 Cover)
9. コバルトブルー feat.星野みちる
10. 気がつけば Looking For Your Love feat.星野みちる
11. 今日 私はひとり(今井美樹 Cover)
12. 星空と孤独のマスカレード
13. サーチライト
14. 六月の夢 feat.佐々木詩織
-- Encore --
15. そよ風のKISS  feat.佐々木詩織 & 星野みちる
16. 渋谷で5時 feat.佐々木詩織 & 星野みちる
17. 汗は甘い口づけ