westcoast sumiit

『LIVE Light Mellow』の翌日から4日間、まさに ダニー・コーチマー&イミディエイト・ファミリー 三昧の日々。LIVE Light Mellowと重なった Billboard LiveTokyo 初日公演こそ見逃したが、17日(日)はヴィヴィド・サウンドで行なわれたサイン会後のウェルカム・パーティに顔を出し、18日(月)に Billboard Live Tokyo 2日目の2nd show を堪能。19日(水)は、日本のアーティストと共演する ウェストコースト・サウンド・サミット(命名:カナザワ)のリハーサル@都内某スタジオに潜入。そして20日(木)にその本番@ Zepp Tokyo をドップリ堪能、という怒涛の日々だった。リハーサルの模様は すぐに facebookにアップしたので、ココでは主に20日のイベントの模様をレポートする。

主だった日本人出演者は、五輪真弓、小坂忠、奥田民生、中村まりのフロント勢に、演奏陣は佐橋佳幸(g)がバンマス、Dr.Kyon(kyd)、屋敷豪太(ds)、小原礼(b)がサポートという布陣。そこに来日メンバーであるダニー・コーチマー(g)、ワディ・ワクテル(g)、リーランド・スクラー(b)、ラス・カンケル(ds)、スティーヴ・ポステル(g)の5人が様々な形で絡む。東京勢のラインアップは、いずれも来日メンバーと共演していたり、あるいは強いリスペクトを抱いているミュージシャンたち。事前のアナウンスには名前がなかった松任谷正隆(kyd)も、本人の強い希望により急遽参戦した。マンタさんは奥方ユーミンのレコーディングで、何度もリーと顔を合わせている親しい間柄である。

客電が落ち、まず最初にステージに上がったのは、佐橋・Dr.Kyon・小原・屋敷による日本人バンド。プレイするのは、ザ・セクションの<Street Pizza>で、彼らの3作目『FOLK IT OVER』(77年)からのカヴァーだ。何でも佐橋さんが自分のライヴで披露している楽曲らしいが、この曲は今ツアーには不参加のクレイグ・ダーギー作品。もしかして、そこまで意識して選んだのか、佐橋さん

1曲終わったところで、今回の司会進行役を務めるご同業の大先輩:萩原健太さん登場。バンマスである佐橋さんとのクロストークを交えつつ、この日の大まかなメニュー、すなわち 1st Stageが邦楽アーティスト、インターバルを挟んでの2nd stageがダニー&イミディエイト・ファミリーの出演となることが告げられた。そして忠さん&マンタ氏が呼び込まれ、まずは2人が組んでいたフォー・ジョー・ハーフの話をひとしきり。フォー・ジョー・ハーフはマンタ氏にとって初めてのプロ・バンドで、何と2人が公の場で一緒に演奏するのも、それ以来40数年ぶりだそう。そして忠さんが「今日は当時のリズム隊、後藤次利と林立夫が来てないので、彼らを代わりに…」と招き入れたのが、リー&ラスだった。そして佐橋さんがペダル・スティールに回り、<ありがとう>でフォー・ジョー・ハーフを再現。このあと小原・屋敷組が再びステージに上がり、何とダブル・ドラム&ツイン・ベースで<ほうろう>、そして忠さんチョイスによるジェイムス・テイラーのカヴァー<How Sweet It Is>(オリジナルはマーヴィン・ゲイ)を。ここでゲスト・シンガーに中村まりが紹介され、コーラスに付いた。それこそ、もう何度もライヴで聴いている<ほうろう>だけど、シンプルかつゆったり構えているようでシッカリとグルーヴするリー&ラスのリズムが入ったこの演奏は、また別格の味わいだった。

忠さん・まりさんと入れ替わりで現れた五輪真弓は、「もうすっかり<恋人よ>の人なので、こういうのに参加するのは久しぶり」と自虐ネタを絡ませる余裕のパフォーマンス。そう、元々彼女は “和製キャロル・キング” 的触れ込みでデビュー。キャロル自身も参加したL.A.録音盤を出したシンガーだ。そこに参加したリーは、初めての日本人セッションだったのか、後々まで「マユミは元気か?」「マユミはどうしてる?」と、彼女のことを気にかけていたそう。当初このイベントも、マンタさんと一緒にユーミンも、という話があったと聞くが、諸般の事情で実現せず、そのあと真っ先に五輪さんに白羽の矢が立った。もしかしたら、リーたっての願いを組み入れたのかもしれない。<少女>、<You've Got A Friend>のカヴァー2曲のみのステージだったが、往年のザ・セクション・ファンには、この五輪さんの<少女>で感涙に咽んだ方が多かったようである。

3番目は、本日の最年少出演者:中村まり。忠さん、五輪さんのコーラスにも駆り出された彼女、まだ決して知名度は高くないけれど、アメリカン・ルーツ・ミュージックを歌う若手シンガーとして注目すべき存在で、細野晴臣、エイモス・ギャレット、ジェフ・マルダーらとの共演歴を持つ。佐橋さんも「最初に細野さんに紹介され、こんな人がいるのか!?、と驚いた」という逸材。今回はラス&リー、佐橋、Dr.Kyonという豪華メンバーで、キャロル・キングのカヴァー<I Feel The Earth Move>と<Smackwater Jack>を披露。最年少とは思えぬ落ち着きぶりで、心地良い空間を演出した。

そして日本勢のトリは奥田民生。US録音のデビュー作や初期ミニ・アルバムでワディと、その後ダニーとも共演していることから、まず<野ばら>にワディが入って豪快なギター・ソロを披露。続く<Beef>ではダニーとスティーヴ・ポステルもステージに上がり、ギター5本、ドラス&ベース各2人に鍵盤という一大ロックン・ロール・セッションが展開された。特にダニー、ワディ、奥田のスリー・トップによる掛け合いギター・ソロ合戦は、ヤンヤの大歓声 大盛り上がりで1st showを終えた。

しばしのインターバル後の2nd stageは、ダニー&ファミリーのパフォーマンスをタップリと。Billboard Live Tokyo / Osaka での単独公演を観られた方は、それがほぼそのまま再現されたと思って良いだろう(若干のセットリスト変更はあり)。オープニングは、先行リリースされたアルバムのタイトル曲<Honey Don't Leave L.A.>。アティチューズで発表されジェイムス・テイラーも『JT』に収録した、ダニーの代表曲だ。続いてはワディがマイクの前に立ち、ウォーレン・ジヴォン<Lawyers, Guns & Money>を熱く歌う。もちろんエキセントリックなロックン・ロール・ギターも炸裂。他にもワディは同じくウォーレン・ジヴォン<Werewolves Of London>、イミディエイト・ファミリーのアルバムではダニーが歌った<All She Wants To Do Is Dance>(ドン・ヘンリー)、ワディの自作曲<High Maintenance Girlfriend>でヴォーカルを担当した。楽曲的にはドン・ヘンリーの方が有名なのに、ジヴォン楽曲に飛ぶ歓声の熱量たるや…

一方スティーヴ・ポステルは、去年のダニーの来日公演にも同行していた唯一のメンバー。スティーヴ自身のソロ作に収録の軽快シャッフル<3:45 Coming Through>を手始めに、やはりイミディエイト・ファミリーのアルバムに入っていたダニーとジャクソン・ブラウンの共作曲で、映画主題歌としてジャクソン最大のヒットになった<Somebody’s Baby>、ダニーとドン・ヘンリーが書いた<New York Minute>でヴォーカルを。演奏ではスライドでソロをとる場面が多かった。でもこのギター3人のバンドに於いては、バイ・プレイヤーに徹するスティーヴの存在感は極めて大きいように思う。一歩退いてアンサンブルのまとめ役を果たし、ダニーやワディが活きるかどうかはこの人次第、ってなトコロが感じられた。

そして親玉ダニー・コーチマー。タイトル曲以外でリードで歌ったのは、ドン・ヘンリー<Dirty Laundrey>と、ジェイムス・テイラーに提供しジョー・ママでもプレイした<Machine Gun Kelly>、そして最新アルバムでも歌っていた新曲で、アンコールに登場のノリノリ シャッフル・チューン<Cruel Twist>。日本のファンはギター弾きのクーチに期待する向きが多いようだけれど、今回の来日ツアーで断片的に接したダニーは、プロデューサー気質の方が目立っていた気がする。例えば、誰とでも気さくに接するワディやリー&ラスに比べ、ダニーは少し神経質っぽくて。メンバー同士はともかく、常に自身の立ち位置を意識しながら人と相対しているように見えた。だから周囲もダニーには気を遣っていて、スティーヴが公私に渡る世話人ってな役どころ。ステージ構成にしても、アンコールで日米ミュージシャンが勢揃いして…、という構想もあったらしいが、そこはダニーが「USメンバーだけで締め括る」とダメ出ししたと聞く。実際に言葉を交わすと、ガッツリ握手して軽くハグしてくれたりするダニーながら、ただ気の良いセッションマンで終わらないところが、プロデューサー:ダニーを作ったのだろう。

ちょうど1年前のソロ公演@Billboard Live Tokyoと同様、如何にもウエストコースト・バンド然としたステージながら、やはり演奏のスケール感は、旧知の強豪メンバーが揃った今回の方が、ひと回りもふた回りも大きい。鍵盤ナシのギター3本というアンサンブルは、ややむすればウルサくなってしまうと危惧したが、全然そんなコトはなく、むしろ凹凸がしっかりジャスト・フィット。それでいてダニーが遠慮した感もなく、安心して委ねられるメンバーたちに囲まれ、彼にしては存分に弾きまくったように思う。ワディは少しダニーを引き立てた様子があったけれど、艶やかなスライドを披露するなど、頻繁に見せ場を作っていた。

とにかく、職人気質丸出しのバンドでありながら、有名曲が並んだセットリストの妙で、全然マニアックに聴こえないのがミソ。でもこの来日メンバーで次があったとしたら、日本側は一体誰が迎え撃ったら良いのか。きっと、コレ以上はあり得んだろうな、という貴重かつ濃密なライヴ体験だった。

westcoast summit setlist