chris rainbow 3

英国ポップのレジェンダリー・シンガー:クリス・レインボウの最高傑作『WHITE TRAILS』(79年) が、ボーナス・トラック3曲を追加して、英Cherry Redから再CD化。それにカナザワが書いた解説を付けた国内流通盤が、先週から出回っている。日本での復刻はコレで3回目。うち2回のライナーを書かせてもらったのは、かなり光栄だ。

クリス・レインボーが積極的にソロ活動を展開していたのは、主に70年代。その頃 彼の名を知るのは、UK産のポップ・ロック、例えば10ccやELOあたりを偏愛していたホンのひと握りのマニアだった。でも80年代に入るとセッション・ワークを開始。アラン・パーソンズ・プロジェクトやキャメル、イエスのジョン・アンダーソンのアルバムなどに参加し、その美声でジワジワと知名度を上げていく。ところがCD時代になってビーチ・ボーイズの再評価が始まると、早くから一人多重録音を行なっていたクリスに注目する人が増え、 “ひとりビーチ・ボーイズ” と呼ばれるように。そこで最初の復刻が為され、ずーっとマイナーな存在だったクリスにスポットが当たるようになった。

参加メンバーは、元パイロットのイアン・ベアンソン(g)、英国きっての売れっ子セッション・ドラマーで、後に渡米してTOTOに加入(今は離脱)するサイモン・フィリップス、元アフィニティでやりジェフ・ベックをサポートしたモー・フォスター(b)、ウェブ〜サムライ〜グリーンスレイド〜スタックリッジを渡り歩いたデイヴ・ローソン(kyd)、ジャズ畑出身でイフやモリシー=ミューレンで活躍したディック・モリシー(sax)、そして第2期ジェフ・ベック・グループで頭角を現し、ハミングバードを率いたマックス・ミドルトン(kyd)等など、当時のロンドンきってのセッション・ミュージシャンたち。バック・ヴォーカルには、ゴンザレスで歌っていたリンダ・テイラーの名もある。そしてこのキャスティングが、英国産らしい奥ゆかしさのある洗練、マイルドなグルーヴを捻出した。79年という時代背景もあるが、そのノリや音の肌触りは、クリス・レアに通じるオトナの味わいが漂う。

そしてその上に、時には20トラック以上を費やすこともあるという一人多重コーラスが乗る。でも一方で宅録系に多いパラノイアっぽさとは無縁。あくまで、ふんわり柔らかで広がりのある心地良いハーモニーを構築する人なのだ。ただし、底抜けに明るいビーチ・ボーイズとは違って、程よくウェットで知的に響くのがブリティッシュ。3年半前に68歳で逝ってしまったのが惜しまれる。

AORそのもではないけれど、こういうインテリジェントなオトナの英国ポップを解する人は、AORの心意気を分かっている人だと思うな。