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AORのド定番、ロビー・デュプリーの1st / 2nd(80/81年)が、米Blixa Sounds からボーナス・トラック入りで再発された。ちょうどワーナー・ジャパンで来月、AOR系名盤が紙ジャケで数枚リイシューされるが、当初その候補にリストアップされていたものの、最近になってロビー自身が権利を引き取ったそうで、結果オミット。一応 Blixa盤も紙ジャケだが、オリジナルのシングル・ジャケを勝手にゲートフォールドにしているので、日本盤紙ジャケのような再現性には乏しい。故にボートラ目当てに買い直しするかどうかの選択になるだろう。

まず80年作『ROBBIE DUPREE』は、邦題『ふたりだけの夜』としてお馴染み。全米6位と大ヒットした<Steal Away>の盤である。ロビーのデビュー作であることは言うまでもないが、元クラッキンのピーター・バネッタ&リック・チューダコフにとっては、プロデュース・チームとして売り出している真っ最中。当時はクラッキン自体がロクに知られておらず、まさに新人クリエイター・コンビという印象だった。

それともうひとつ、<Steal Away>がドゥービー・ブラザーズ…、というかマイケル・マクドナルドが創ったキーボード・リフをうまく取り込んで流行に結びつけた点で、極めてアピール度が高かった。ドゥービー<What A Fool Believes>の全米No.1獲得が79年4月、グラミー4冠(<What A Fool Believes>でRecord of the YearとSong of the Year、Arrange of the Year、アルバム『MINUTE BY MINUTE』で Best Pop Group of The Year)受賞が 80年2月。そして<Steal Away>のチャート初登場が、その2ヶ月後の80年4月。ドゥービーは偶然にもロビーのプロモーションを請け負ったようなモノである。でもマイケル自身も、クリストファー・クロス、ケニー・ロギンズ、ニコレット・ラーソン、ローレン・ウッド等などの作品に参加し、急速に露出を増やしていた時期。当然、相乗効果もあっただろう。しかもバネッタ&チューダコフは、クラッキン時代にドゥービーのツアーでフロント・アクトを務めたりしていた仲。所属レーベルも同じ系列だった。

だからバック・メンバーにもクラッキン・ファミリーが多数参加。やはり当時は無名だったビル・ラバウンティが2枚目のシングル<Hot Rod Heart>(全米15位)を提供し、バック・ヴォーカルでもクレジットされている。マシュー・ワイルダーも本名マシュー・ウェイナーで参加。<Steal Away>で印象的なエレキ・シタールを弾いているカル・デヴィッドは、クラッキンやロビーがウッドストックにいた頃の仲間で、シカゴ結成のピーター・セテラがいたエクセプションズ、ポコで名を上げるポール・コットンとのイリノイ・エキスプレス、それにクラブ・シーンで再評価された(ファビュラス)ラインストーンズなどでプレイしていた御仁だ。収録曲にはビル・チャンプリンのソロ作から<We Both Tried>を取り上げている。その他にも好曲がスッシリ詰まった、まさにAOR名盤にふさわしい一枚だ。

それに次ぐ81年の2作目『STREET CORNER HEROES』も、同じ陣容で、スタイルやテイストもまったく一緒。ここからは<Brooklyn Girls>が全米54位のスマッシュ・ヒットになった。セールス的には今イチ伸び悩んだが、ただ大きなヒットが出なかっただけで、内容的に遜色はない。現に<Brooklyn Girls>を含む4曲がビル・ラバウンティの提供で、内2曲はロビーと共作。更に<Are You Ready For Love?>は、まだデビュー前のグレッグ・ギドリーの作品(後に彼のアルバムにも収録)なのだから、マテリアルの充実は推して知るべし。

ただし今回のリイシューでは、2枚とも参加メンバーのクレジットはあるものの、楽曲クレジットは一切なし。やっぱりUSプレスは作りが甘い、としか言いようがない。残念…。またメジャー・レーベル管理を外れたことで、今後はコンピなどに<Steal Away>が収められる機会も減っていくだろう。まぁ、どとらを選ぶかはアーティスト次第、だけど。

ちなみにボートラは、1stには<Steal Away><Nobody Else><Hot Rod Heart><Lonely Runner>の4曲のスペイン語ヴァージョン。そのうち<Nobody Else>はシングルB面で発表され、他3曲は以前『VINTAGE 2』というミニ・アルバム(01年)で蔵出しされた。また『STREET CORNER HEROES』のボーナス曲は、<Saturday Night>のシングル・エディション。かつてリリースされたレア音源集『VINTAGE』や『VINTAGE 2』は、今や完全に入手困難だから、スペイン語盤を聴きたけりゃコレをゲットするのが賢明かな。