yvonne elliman

日系の血を引くハワイ出身のシンガー:イヴォンヌ・エリマンの5作目『NIGHT FLIGHT』(78年)が、Disco Fever シリーズで世界初CD化。イヴィンヌといえば、古いファンはアンドリュー・ロイド・ウェバーに見い出されて人気ミュージカル『ジーザス・クライスト・スーパー・スター』に出演し、マリア役を演じて、劇中歌<私はイエスが分からない>をヒットさせたことで知られる。でもカナザワ世代は何といっても、エリック・クラプトンのバック・シンガーとして名を知った人がほとんどだろう。

対してコレは、別の意味でイヴォンヌの頂点と言える作品。ビー・ジーズが提供し、映画『SUTARDAY NIGHT FEVER』のサウンド・トラックに収録されて全米No.1を獲得した<I Can't Have You>で有名なアルバムなのだ。逆にそれだけで語られてしまいがちで、それゆえ今回もディスコ括りでの再発となった。

でもアルバムを俯瞰としてみると、実際はほとんどディスコとは縁の薄い、いわゆる王道ポップ・ヴォーカル・アルバムの様相。オープニングからしてニール・セダカ作のポップ・バラード、メンター・ウィリアムス(ポール・ウィリアムスの兄)やスティーヴン・ビショップの提供曲もある。エリック・マーキュリーとウィリアム・D・スミスが共作した<Down The Backstairs Of My Life>は、ケニー・ランキンやリア・カンケル、ジョーイ・スキャベリー、テルマ・ヒューストンらも歌っていた好曲。オーストラリアのシンガー・ソングライター:ブライアン・キャド作<Lady Of The Silver Spoon>は、クラプトン効果を狙ったか、軽〜いレゲエだ。女性ロック・バンドの草分け:ファニーのニッキー・バークレーも曲を書き下ろしている。個人的に目を惹かれるのは、アルバムで一番重心が低くてエグい演奏が聴けるアティチューズのカヴァー<In A Stranger's Arms>。演奏陣にもデヴィッド・フォスターを除く3人(ダニー・コーチマー、ジム・ケルトナー、ポール・スタールワース)が揃っているので、おそらく彼らがバックも担当したのだろう。

楽曲ごとのクレジットはないものの、先行してヒット中だった<I Can't Have You>だけがフレディ・ペレンのプロデュース。それ以外はポップ職人ロバート・アペル制作で、なるほどディスコ・アルバムにならないのは当然と言える。アティチューズ勢を除いた参加ミュージシャンも、リトル・フィートのローウェル・ジョージ(g)やリッチー・ヘイワード(ds)、エルトン・ジョン周辺からキキ・ディー(cho)、ディー・マレイ(b)とデイヴィー・ジョンストン(g)、それにザ・セクションのラス・カンケル、リー・スカラー、クレイグ・ダーギー(クーチもいるから全員参加か)、それにジェイムス・ギャドソン/マイク・ベアード(ds)、ディーン・パークス/リッチー・ジィトー/ベン・ベネイ(g)といった職人たちもいる。驚いたのは、エリック・カルメン、スティーヴ・クロッパー、それにセシリオ&カポノが絡んでいること。この辺りはビー・ジーズの大ブレイクを受けての、所属レーベル/事務所のRSO人脈総出演、というコトだろう。

ディスコではないし、解説に書かれた “AORの名盤” にも小首を傾げざるを得ない。それこそ、AOR度で言えば、マイケル・オマーティアンが絡んだ次作『YVONNE』の方が遥かにそれっぽい。でもオトナのポップ・ヴォーカル作品という斬り口なら、確かに味わい深いアルバムである。この際、冠はディスコでも何でもイイので、まずは初CD化に乾杯