mickey thomas

ジェファーソン・スターシップ〜スターシップのリード・シンガーとして知られるミッキー・トーマスが、81年にリリースしたソロ2作目『ALIVE ALONE』が、ひそかに世界初CD化。歌の上手い実力派シンガーなのに、ソロ活動ではほとんど実績らしい実績を残せていないのは何故か。その辺りをこのアルバムで検証しつつ…。

プロデュースは後期イーグルスやジョー・ウォルシュでお馴染み、ビル・シムジク。メンバーもドン・フェルダーやジョー・ヴァイターレ(ds.kyd)といった周辺人脈に、スティヴン・スティルス周辺からジョージ・チョコレート・ペリー(b)とポール・ハリス(kyd)を引っ張ってきて、4リズムを組ませている。他にジェファーソンのクレイグ・チャキーコ(g)とドン・バルドウィン(cho)、スティーヴ・ポーカロ(syn)、パブロ・クルーズのコリー・レリオス(ked)、ウォーターズ(cho)、ノートン・バッファロー(harmonica)などが参加して脇固め。アレンジを仕切ったのは、プロデューサー実績もあるポール・ハリスだ。

作曲陣もアンディ・ゴールドマークやジュールズ・シアーといった職人たちが名を連ねる中、ジャーニーのジョナサン・ケインとフリートウッド・マック一派のロビー・パットンが共作した<Maybe Tomorrow>があったり、後にスターシップに加入するブレット・ブルームフィールドが楽曲提供していたり。フレデリック・ナイトがサザン・ソウル・シンガーの Z.Z.ヒルに書いた渋いヒット<This Time They Told The Truth>をポップに演っていて驚くが、この選曲はミッキーの趣味なのだろう。でも一番驚くのは、ドン・ヘンリーとグレン・フライが提供した<Too Much Drama>。書き下ろしというより、シムジクがイーグルス『THE LONG RUN』のアウトテイクを貰い受けた可能性もあり、なるほど曲調は確かにそれ風。しかもドン・フェルダーがギターだから、余計リアルである。

更に飛び出すクリーム<Badge>のカヴァー。これもハマリ過ぎなくらい上手くハマっているが、逆にクリームのようなハスっぱ感がなく、極めてスムーズに盛り上がる。でもその優等生的なところが、逆にこのアルバムの惜しさというか、ミッキーの限界というか。

要するにミッキー・トーマスは、いわゆるシンガー、“歌唄い” なのだな。エルヴィン・ビショップ・グループ時代の初ソロ作『AS LONG AS YOU LOVE ME』の時には、確か2〜3曲の作曲クレジットがあった気がするが、スターシップでは詞を手伝う程度だったし、ココでは曲作りにはノー・タッチ。それだけ周囲からのバイアスに左右されやすい人なのだ。シムジクはエルヴィン・ビショップ時代からミッキーを見てきたが、彼のハイトーン・ヴォイスを活かすなら、他の人選だってあったと思う。

もっともこの当時のミッキーにはジェファーソンという後ろ盾があった。だからあくまで別働隊、バリエーションとしてのソロ作とすれば、レゲエなどもやってる軽〜い作りの本作で全然OKだったのだろう。「独立しました」張りに気合いが入ったアートワークだけど、実の内容は小振り。その後スターシップ解散後のミッキーの貧弱な動きを見ると、傍に良き理解者がいたなら…、と思ってしまうのである。