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8月に予定されている3年ぶりの来日公演を前に、ネッド・ドヒニーの最新スタジオ・アルバム『THE DARKNESS BEYOND THE FIRE』が、ようやく国内盤で一般流通することになった。10年に完成しながら、契約がまとまらず、今まで自主制作に止まっていた不遇の充実作。出回ったのは来日時に本人が持ち込んだ即売分と、追加プレス分が一部輸入CDショップに置かれただけだったので、流通量はかなり少なく、手に入れにくい状態が続いていた。それを今回、我が【Light Mellow Searches】@P-VINEから、遅ればせながら。マイケル・マクドナルド最新作の国内発売もそうだけれど、AOR系音楽ライター/ジャーナリストとして、これでホンの少しだけ肩の荷が下りたような気がしている。

しかもネッドに関しては、14年に米レーベルNumeroから編集盤『SEPARATE OCEANS』が発売されて以降、ちょっと怪しいアナログの7インチ・シングルが続々切られたり、名盤『HARD CANDY』や『PRONE』が日英で相次いでCD復刻されるなど、状況が好転。アサイラム発の73年デビュー作『NED DOHENY』も、UKでアナログ再発、日本では初紙ジャケ化されたばかり。これで今回はヘイミッシュ・スチュアート(元アヴェレージ・ホワイト・バンド)を引き連れてサマー・ソニックに出演予定だから、単に盛り上がるだけでなく、着実にファンの若返りが期待できる。

既に作品の内容については伝わっていると思うが、いわゆるセルフ・カヴァー集で、90年代のアルバム収録曲をリ・レコーディングしたもの。いつも爽やかなアートワークを見せてきたネッドにしては、暗いイメージが気になるが、パフォーマンス自体は素晴らしく、オーガニックなぬくもり感としなやかなグルーヴを伴ったサウンドに、ネッド特有の青臭くも瑞々しいハイトーン・ヴォイスが冴え渡る。今作は特にリズムの押しが強く、従来よりもエッジィ。オリジナルに当たる『LIFE AFTER ROMANECE』や『LOVE LIKE OURS』、『BETWEEN TWO WORLDS』の人工的音像に比べると、太くドッシリ安定感があるようにも感じられる。唯一、オリジナル・アルバムには未収録だった<In A Perfect World>は、ネッドが日本の女性ヴォーカル・トリオ:Amazons に提供した楽曲。

とりわけ93年作『BETWEEN TWO WORLDS』からは、収録曲の半分以上をココでリメイクした。…ということは、ネッド自身あのアルバムは、何処か中途半端で不完全燃焼気味だったのかもしれない。キャット・グレイ(kyd)、ゲイリー・マラバー/マイケル・ホワイト(ds)、ジミー・ハスリップ(b)、ルイス・コンテ(perc)、といった主要メンバーに大差はなく、ドン・グルーシンやグレッグ・マティソンの存在に目を引かれたぐらい。コーラス陣にもマリリン・スコット、レスリー・スミス、マクサン・ルイス、ジョセフ・ウィリアムス、シャーウッド・ボールらが参加している。

つまり、気心知れた信頼できるミュージシャンを集め、ジックリ作られた様子が伝わるのだ。自主制作を貫き、それを安売りしなかったのも、ネッドがひたすらピュアに音楽家としての矜持を持ち続けているからに他ならない。その姿を、ようやく国内発売されるこの作品で確かめて戴けたらば幸いだ。