boz_out of blues

ボズ・スキャッグスの新作『OUT OF THE BLUES』が到着。タイトル通りのブルージーな内容で、ボズ自身 “ルーツ回帰3部作の最終章” 的な発言をしている。未だに “AORの巨匠” 的に扱われる日本の反応はともかく、前2作に当たる13年作『MEMPHIS』、15年作『A FOOL TO CARE』と極めて中身の濃いアルバムが続いていたから、これからのボズは、ずーっとそうしたR&Bと真摯に向き合う作品を創っていくものだと思っていた。なのでこの発言は少々意外。でも、かといって変に肩へ力が入るでもなく、3連作にあっては一番シブい作りかもしれない。

それは、『MEMPHIS』でも取り上げたジミー・リードの楽曲を再び取り上げたのに加え、「大きな影響を受けた」と公言するボビー・ブルー・ブランドのレパートリーを2曲、更に ここ数年共演を重ねるロス・ロボスから教えられたマジック・サムの曲と、これまでで一番ブルース直系のナンバーが多いため。同じルーツ回帰でも、前2作はソウル系が多かったのに対し、今回はタイトル通り、若干ブルースに寄り添っている。…とはいえ、97年に唐突に出した『COME ON HOME』のブルース回帰よりは、スンナリと馴染めそう。それは当然『MEMPHIS』からの流れがあるからで、ルーツ回帰にも、泥臭さを一度濾過したような洒脱さがある。

制作は前2作を手掛けたスティーヴ・ジョーダンから、ボズ自身のセルフ・プロデュースに。これがスケジュールの都合なのか、音楽的な判断かは分からないが、その他の主要メンバー、レイ・パーカ−Jr.(g)、ウィリー・ウィークス(b)、ジム・コックス(kyd)らは継続参加。ジョーダンの後任ドラマーは、旧知のジム・ケルトナーが叩いている。ケルトナーは『SILK DEGREES』成功の陰の立役者。あのアルバムのメンバー選びの時、ボズは真っ先にケルトナーに声を掛けたが、スケジュールがまるで合わず、ケルトナーが当時目を掛けていた新人ジェフ・ポーカロを紹介。そのジェフが自分の仲間であるデヴィッド・ペイチ以下を呼び、『SILK DEGREES』の骨格が出来上がった。

また初顔合わせとして、今ではボブ・ディランの右腕として知られるチャーリー・セクストン、そしてエリック・クラプトンやロジャー・ウォーターズらとの共演で知名度を上げたドイル・ブラムホールII世という2人のギタリストが華を添える。そしてホーンには、タワー・オフ・パワーの重鎮ドク・クプカとトム・ポリッツァーも。

日本盤ボーナス曲を含む全11曲中半分は、最近のボズお気に入りのソングライター:ジャック・ウォルロスの提供。そこにあって話題になりそうなのは、ニール・ヤング<On The Beach>のカヴァーだろう。『MEMPHIS』ではディランやスティーリー・ダン、『A FOOL TO CARE』ではボビー・チャールズを取り上げたから、その流れだろうか? 

ボズが “3部作” と区切りをつけたのは、前2作がメンフィス、ナッシュヴィル、そして今作をハリウッドで録ったことと繋がっている模様。その辺り、間接的に話を訊く機会があったので、後日記事になったらお知らせしたい。

いずれにせよ、いつまでも “AORのボズ” という形にこだわっていたら、彼の本質を見逃してしまうことになりかねない。もちろんあの頃のボズは素晴らしかった。でもそれ以外は認めない、という原理主義的AORファンは ノー・サンキューよ。