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インコグニートの総帥ブルーイが率いる別働ユニット:シトラス・サンの、約4年年ぶりの3rdアルバム。元々はブルーイが英国の重鎮セッション・ギタリストであるジム・マレンを担ぎ出すためのプロジェクトとして結成され、00年にスムーズ・ジャズ色の強いインスト作で初登場。でもそれきり音沙汰がなくなり、テンポラリーなユニットだったんだな、と思っていたら、14年に『PEOPLE OF TOMORROW』で突如復活。その後は15年、16年、17年と毎年来日し、特に2度目の来日はフルート奏者ボビー・ハンフリーを帯同したメモリアルなショウとなった。

こうしたコンスタントな活動から、歌モノのジャズ・ファンクはインコグニート、インスト中心のクロスオーヴァー・スタイルはシトラス・サンと、大まかな路線の違いが明らかに。そうなると俄然シトラス・サンに肩入れしたくなるカナザワなのだが、前回公演からジム・マレンは来日せず、今作でも2曲弾いているのみ。代わりに前面に出てきたのが、インコグニートでも吹いているトランペット/フリュゲルホーンのドミニク・グローヴァーだ。

このペット・フィーチャー路線は、14年作『PEOPLE OF TOMORROW』制作以降に出てきたモノで、15年のシトラス・サン公演では早くも、本作に収録した日野皓正のカヴァー<Send Me Your Feelings>、クリストファー・クロス<Ride Like The Wind>を演っていた。しかもアンコールはトム・ブラウン<Funkin' For Jamaica>で、16/17年公演では本編のセットに組み込まれていた(本作には未収)。つまりライヴでは、この頃から完全にトランペットを押し出しているのだ。

え! ちょっと待って! 何故に<Ride Like The Wind>でトランペット?と思う方もいるだろう。でもこの曲は、かのフレディ・ハバードが82年に逸早くカヴァーで取り上げ、同名アルバムまで出している。マニアなブルーイがそれを知らないワケはなく、おそらくはAOR名曲というより、元々はそのハバードのカヴァーのセンで選ばれたと観るべき。そしてそれをインコグニートでも歌っているイマーニにヴォーカルを取らせ、そのまま本作のアルバム・タイトルにしているのだから、何をか言わんや。さすがブルーイ、機を見るに長けているというか、ビジネスが上手いというか…

そしてもう1曲の気になるカヴァーは、マルコス・ヴァーリと故リオン・ウェアによる81年の共作<Vontade De Rever Voce>である。両人がそれぞれ自身のアルバムに収録している(ウェアは<Rockin' You Etenally>)楽曲で、ここではパーカッションのジョアン・カエターノがポルトガル語で歌っている。ちなみに本作は、17年2月に鬼籍に入ったウェアに捧げられている。

アルバム終盤を占めるのは、“Krabi Suite”の副題がついた5曲メドレー。こちらは、インコグニートにも名を連ねるブルーイ・ファミリーの敏腕ミュージシャンたちが、スタジオで練り上げたジャム色の強いトラックだ。言い換えれば、70年代スタイルの古き良きクロスオーヴァー・サウンドを凝縮したもの。インゴグニートをファンクからではなく、ジャズ的スタンスで愛でているファンには、返ってご本家よりもしめるアルバムになるだろう。日本盤はボーナス2曲を追加収録。