citrus sun 2018

新橋のホテルで某大物作曲家の先生とミーティングしたあと、BlueNote Tokyo へ。観に行ったのは、数日前に当ブログへポストしたばかりの、ブルーイ率いるシトラス・サン来日公演。今回は日本サイドのゲストがいて、前半2日は福原美穂、後半2日は日野皓正。4days の3日目2ndに当たる今回はヒノテルが出演する。前回ポストに書いたように、ブルーイ御一行は新作でヒノテル<Send Me Your Feelings>をカヴァーしており、今夜はオリジネイターとの共演になるワケだ。しかもそれを収録したヒノテル『CITY CONNECTION』の16年リイシュー最新盤は拙ライナーなので、この日に足を運べたのはラッキーだった。

別名義とはいえ、マット・クーパー(kyd)、フランシス・ヒルトン(b)、フランチェスコ・メンドリア(ds)、フランシスコ・サレス(g)、ジョアオ・カイターノ(per,vo)は、そのまんまインコグニートのメンバーでも。いわばインコグニートのリズム・セクションを母体としたインスト・メインの別動ユニットの体(てい)で、アシッド・ジャズとかジャズ・ファンクというよりは、ファンキー・フュージョンと書いた方が内容が伝わるかも。ブルーイはMCで、「こういうレガシーを今日に伝えたい」と言っていたが、確かに最近のUS勢は、こういうのを真っ向から演る人が減ってしまった。

ショウは、今回フロントに立つトランペットのドミニク・グローヴァーを紹介し、新作にも入っている<Calling Mr Wolf>でしなやかにスタート。次いで、やはりインコグニートでも歌っている、“カワイイ、イマーニちゃん”(by ブルーイ)が登場し、前作で取り上げていたテリー・キャリアーの名曲<What Color Is Love>をメロウに聴かせた。ここでブルーイが曲順を間違え、ヒノテルを呼び込もうとするハプニング。“もうボクも歳だからね” と笑ってゴマかしつつ、新作タイトルにもなっている<Ride Like The Wind>を華麗に。MCでは、クリストファー・クロスと それをカヴァーしたフレディ・ハバードのヴァージョンをミックスしてシトラス・サン風に仕上げたと明言していた。

そしてゲスト:ヒノテル登場。登壇するなり周りがパッと明るくなり、まさにスターの風格たっぷりだ。吹けば十八番のハイノートをバシッとキメたり、ロング・トーンでオーディエンスを沸かせたりで、ドミニクやリズム隊をグイグイ先導していく。論理よりも態度で示す、そんなカリスマ性があるのだな。だから他のメンバーのソロも熱くヒートアップ。マットのソロには若い頃のジョー・サンプルが乗り移ったかのような凄みを感じたし、元からエキセントリックなフレーズを連発するフランシスコ・サレスは、ほんんどイッちゃてるようなアドリブを披露した。

中盤はパーカッションのジョアオが前面に出てきてブラジリアンな楽曲を歌い、ブルーイがジャカルタで発掘した20歳のハーモニカ奏者:レガ・ダウナをフィーチャー。スティーヴィー・ワンダー作でクインシー・ジョーンズも取り上げた<You've Got It Bad Girl>他を組み込んで、ややメロウにスロウ・ダウンする。一転、変則的なフランチェスコ・メンドリアの爆裂ドラム・ソロを挟んでは、やはり前作からの<Cocking With Walter>、そしてマイルス・デイヴィスのスタンダード<So What>をロニー・ジョーダン版でリメイクした。

更に当初はアンコール予定だったと思しきトム・ブラウンのヒット<Funkin' For Jamaica>を、ステージを下りることなく、ほとんど本編最後のノリで。シトラス・サン公演ではもはや定番だが、今回はヒノテルやレガ・ダウナも再びステージに上がっての大フィーナレ。ココでもヒノテルは、ゲスト参加という気軽さゆえか悪ノリ気味の絶好調さで、イマーニちゃんを煽ったり、バンドを仕切るようなジェスチャーまで。あんなカッコ良い70歳代はそういない、と思わせる存在感で、なかなか貴重なパフォーマンスが楽しめた。

ちなみに12月には、半ば恒例となったインコグニートの年末公演が決まったそう。でも個人的には、ヴェニューがダンス・フロアと化すインコグニートのライヴより、あくまで演奏で勝負するシトラス・サンの方が、ずーっと理想のバンド像に近しい。有能なプロデューサー:ブルーイのことだから、きっと彼の中でも、ファン・サーヴィスとビジネス、メンバーに対するプレイヤビリティ向上を、使い分けて考えているのではないだろうか。

 [ Set List ]
1. CALLING MR WOLF
2. WHAT COLOR IS LOVE
3. RIDE LIKE THE WIND
4. SEND ME YOUR FEELINGS
5. I WANT YOU
6. VISAO
7. YOU’VE GOT IT BAD GIRL
8. VONTADE DE REVER VOCE
9. DRUM / PERCUSSION SOLO
10. COOKING WITH WALTER
11. SO WHAT
12. FUNKIN’ FOR JAMAICA