andre solonko 3

最近富に注目度が上がっている北欧AOR。そのニュー・カマー群の先陣を切ったのが、フィンランドから登場したサックス奏者/コンポーザー/プロデューサーのアンドレ・ソロンコだ。約6年前の12年暮れに本邦デビューし、間もなく日本発売される新作で既に3枚目を数える。が残念ながら、日本の専門誌が組む北欧AOR特集には名前が上がってこない。これはその編集方針が、半ばロック/ポップス方向に偏っているため。アンドレがヘンルシンキのアンダーグランド・ジャズ・シーンで活躍し、ジャイルズ・ピーターソンやニコラ・コンテが先導して紹介してきたクラブ・ジャズ方面には、ロクに目が配られていないからだろう。

でも若い世代のAORファンには、シッカリ届いている様子。併せてオンタイム世代でも、ジャズ寄りAORが好きでアンテナをピ〜ンと張り巡らしている方なら、チャンと耳に入れている。だからこそ、こうしてアルバムが出るたび、コンスタントに国内盤が登場するのだ。名が通った大物でも日本リリースされないこのご時世に、である。

このアンドレ、現在はヘルシンキが拠点だが、出身はソビエト連邦下のウクライナ。大学に通う頃から本格的音楽活動を行ない、ソ連ゴルバチョフ政権の援助を受けて活発にツアーしていたそうだ。影響を受けたのは映画音楽とフュージョン。作曲ではミシェル・ルグラン、ウラジミール・コスマやエンニオ・モリコーネ、演奏ではクルセイダーズやグローヴァー・ワシントンJr.らに傾倒していた。同時にジャン・リュック・ポンティやミハウ・ウルバニャク(=マイケル・ウルバニアク)にもハマッていたというのが、普通の西側諸国のジャズ・ミュージシャンとは違うところ。しかし91年のソ連崩壊で国を追われ、這々の体でフィンランドへ。そこで地道に足場を固め、自前のスタジオを建てて、07年にアンドレ・ソロンコ&ヴァイナル・ジャムとしてデビューした。このグループで2枚を自主制作盤を作ったところ、それがフランスを中心とする欧州クラブ・シーンのDJや音楽マニアの目に止まり、やがてソロ・デビューへと発展してたのである。

この3rdソロのタイトル “デルタプレーン” とは、いわゆるハングライダーのこと。ふわり舞い上がって大空を滑空する、その気持ち良さを音で表現したような作品だ。基本路線は前2作から変化はないものの、これまでの2作よりもAORファンが親しみやすい音に仕上がっており、ヴォーカルの比重が大きくなった。そこで注目すべきは、彼女の涼やかな歌声を持つ初参加のシャルロッタ・カーブス。ダンサブルな楽曲にもフレキシブルに対応し、クールな中にも熱気を込めて歌うことができる。ワードレスのスキャットも印象的だ。

また、バンド・サウンドによる肉感的グルーヴが前へ出てきたのも今作の特徴。ヨーロッパでは本作発表前にディスコ色の濃い3曲入り12インチ・シングルを出している(本CDにも収録)。クール・アーバンなメロウ・チューン<Le Deltaplane>、楽曲名そのままのファンキー・ダンサー<Moonbeach Disco>、エグいノリを披露するソウル・トラック<Aquaplane>、甘酸っぱいスロウ・ナンバー<Summer 69>、そして12インチからのモダン・ブギー<Le premier Disco sans toi>など、ダフト・パンクやブルーノ・マーズ、タキシードらの動きに感化されつつ、そこに北欧ならではのジャズやAORのエッセンスをまぶして仕上げている。

ジャケットに違わぬ爽快な音の飛翔に、気分はワクワク