chris music promide

ご紹介が遅くなりました。クリス松村さん選曲・監修によるシティポップス系コンピレーション『Chris Music Promide 〜 あの夏のカセット』。久しぶりにお目に掛かってインタビュー取材し、その模様は現在発売中のレコードコレクターズ誌9月号に掲載されている。奇しくもレココレ最新号は、シティ・ポップ特集第3弾:アイドル/俳優編。こちらにもカナザワ参戦なので、両方まとめて触れておきたい。

クリスさんとは、2年ほど前だったか、【Light Mellow 和モノ】シリーズのコンピ発売時に、タワーレコード渋谷店で開催したトークショーで共演させて戴いた間柄。顔を合わせて開口一番「今日はカナザワさんがワタシに取材するんですって? なんか違うんぢゃなぁ〜い?」と早くもツッコミをお見舞いされた。本を出されているせいか、アイドルおたくのイメージが強いクリスさんだけど、ラジオ番組でもお馴染みのように、70〜80年代の邦・洋ポップス全般に明るく、AORとシティ・ポップスの知識はプロ裸足。年齢不詳とはいえ、その知識と愛情の掛け方から察するに、完全にカナザワと同世代とお見受けする。ちなみに上掲アートワークは、若かりし頃のクリスさんのイラストだとか。描いたのは、ユーミン『SURF AND SNOW』の浅沼テイジ氏。当時はクリスさんも爽やかな好青年だったのね

「Light Mellowシリーズがなかったら、コレもなかった」なんてお世辞の上手いクリスさんながら、確かにアーティスト/楽曲的な被りは少なくない。実は彼のところには以前からコンピ選曲の話が多数舞い込んでいたそうだが、ヒットや有名曲の収録ありきで自由度が低いため、すべて断ってきたという。なのでこうしたコンピを組むのは今回が初めて、なんだそうだ。
「ヒット曲は、当時のシーン、時代背景があってこそ成功した。だから今、それを集めて入れるのはチョッと違う。ヒットせずとも時を越えて愛されるべき名曲はたくさんあるから、それをピックアップしたい。それにヒット曲を集めたコンピならば誰でも作れる」
そう熱弁を振るうクリスさんのコンセプトは、そのままカナザワの主張とも合致するところである。

その上で、「まるでマイ・カセットを聴くように、ひと夏の物語を描いていく」のがコンセプト。EPOや大貫妙子、吉田美奈子、伊藤銀次、南佳孝、濱田金吾、久保田早紀、中原理恵、ラジ、ハイ・ファイ・セット等など17曲が収録されているが、その曲の並びにもコダワリがあり、全体でひと夏のストーリーを形成している。それでも、これは懐メロではないと断言。「50年代、60年代の古い曲も、知らない人にとってはすべて新曲」という考え方も、カナザワが常々言っていることだ。「音楽はビジネスであると同時に文化ですから、そのバランスが大事」 イメージはともかく、音楽ファンとしては信頼に足るクリスさん。これは是非、続編に期待したい。

そしてこの記事が紹介されたレココレ誌の特集『シティ・ポップ アイドル/俳優編』。カナザワも中山美穂、草刈正雄、鹿賀丈史、竹下景子、藤竜也、浅野ゆう子など、主に俳優系のアルバム・レビューを執筆させて戴いた。ただ自分には、この手の芸能界チックな方々とシティ・ポップスの間には、少し距離を開けておくべき、という持論がある。拙監修のディスクガイド『Light Mellow 和モノ』でも、04年初版時から、“黄金期にメディア側から発信された傍系モノ” という位置づけで、ひとつのコーナーに封じ込めた。

それは、シティ・ポップのメインストリームが、街や都市生活を音楽で表現するメタファーだったのに対し、アイドルや俳優のそれは、彼らを売り出すためのツール、イメージ戦略に過ぎないから。だから、たまたま時代的にシティ・ポップになっただけで、そこに音楽的必然性はない。作編曲陣やミュージシャンたちは実力派ばかりで、たくさんの素晴らしい仕事を残したけれど、歌う側は与えられただけ。制作側は、ただ締め切りに追われての流れ作業だったりするワケで。ミュージシャンに到っては、誰が歌うのか、どんな歌詞が乗るのか分からないうちに、譜面だけで演奏していたりする。それでこの名演かよという驚きはあるのだが、そこにあまり大きな幻想を抱いても仕方ないんじゃないか? 野口五郎のようなフュージョン・マニアは、例外中の例外と言える。

つまりアイドルを制作する側は、単にハヤリ物を利用しているに過ぎない。もちろんそれが悪いとは思わないが、前2回と今回のシティポップ特集は似て非なるモノだ。享楽的に接するならともかく、真摯にシティポップスを聴くならば、その違いはシッカリ認識しておくべきだと思う。