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7月にリリースされたブレッド&バター 岩沢幸矢の最新ソロ作『君を見つけた日 ~ Knock! Knock! Heaven's Door』のレコ発記念ライヴ@KIWA TENNOZ。元々KIWAは二子玉川にあったライヴハウスだが、そこはオーナーが代わってGemini Theaterとしてリニューアル。KIWA自体は東京湾臨海地区の天王洲へ移った。それからは初KIWA。すぐ近くにTV東京/interFM897があったり、デヴィッド・ボウイ大回顧展が開催された寺田倉庫があったりで、かなりシャレオツな場所だ。小屋自体も天井がサンルーフになったロフト風作りで、このエリアにマッチしていた。

この新作『君を見つけた日 ~ Knock! Knock! Heaven's Door』は、オビのキャッチコピーに「岩沢幸矢、松原正樹を歌う」とあるように、16年に亡くなった日本のセッション・ギタリストの至宝:松原正樹が残した珠玉のインスト曲に詞をつけ、それを サッチンこと岩沢幸矢が心を込めて歌い綴る、という企画アルバム。仕掛け人は、松原(松っつぁん)とは40年近い親交を持ち、かの伝説の名バンド:パラシュートの盟友でもあった作詞/プロデューサー/kyd奏者の安藤芳彦。アイディア自体は、昨年リリースされた幸矢さんの『マストの日時計』制作中にもたらされたが、安藤さんはその後も “ホントにやってイイものかどうか” と逡巡したらしい。何せ曲を書いた本人が空の上にいるのだから…。しかし、松っつぁん生前最後のソロ作『現実と幻覚』(14年)に、当人が「聞いてくれた皆さんが、どのようなイメージを持ってくれたのか? その世界も覗いてみたいものです」いうコメントを寄せていたのを思い出し、ふっと気が楽になったそうだ。そして松っつぁんの奥様:昌江さんからも、「まーちゃん、きっと喜ぶと思うよ」と背中を押され、このプロジェクトが本格化した。

このアルバムに向けた安藤さん、そして幸矢さんの想いの丈は、CDのブックレットの中に記されている。少し青臭いのかもしれないが、音楽を金儲けのツールとしてしか見ていないゲスな連中に聞かせてやりたい、とってもピュアなエッセイだ。そしてそれは、決して饒舌と言えない幸矢さんのヴォーカルの魅力にヤラレてしまっている方々、松っつっぁんのハートフルな歌うギターに魅せられた方々、双方に共通する気持ちだと思う。

記念ライヴは2部構成。バックに中西康晴(kyd)、徳武孝音&aisa(g.cho)を従えた幸矢さんは、松っつぁんプロデュースによるアルファ時代の名作『MONDAY MORNING』からの<クルージン・オン>で、ゆるゆるとライヴをスタートさせた。2曲目が終わると安藤さんが呼び込まれ、ここからは幸矢さんと2人で新作からの楽曲を披露しながら、トークや映像を交えてイベント・チックな進行に。安藤さんが抱えていたアコースティック・ギターは、元々松っつぁんの愛器だそうで、形見分け的に譲り受けたという。『君を見つけた日』で鳴っている松っつぁん音源のアコギも、だいたいコレだそうだ。プロジェクターに映し出された昔の写真では、やはり『MONDAY MORNING』や『PACIFIC』当時のパラシュートとの画像が興味深く…。オマケにパラシュートで安藤さんが歌った<Autumn Night>には、幸矢さんのガイド・ヴォーカル版があったそうで、最近安藤さんがそのカセットを自宅で発掘。今回はその触り部分をお披露目してくれた。そうか、あのアンニュイな英語曲の雰囲気は、幸矢さんの仮歌をコピーしたからだったのか…

インターヴァルを挟んでの後半は、新曲と、前作に当たる『マストの日時計』からの楽曲を中心に。ステージがハネた後に幸矢さんと話したところ、昨日もライヴで(菅原進・藤田恵美とのLove×3)終演後飲み過ぎ、今日は声の調子が良くなかったらしい。それでも本番を聴く限りそんなコトは感じられなかった。ピッチが不安定なのはいつものことだが、声には結構なノビがあった。MCでも「ここにいる最年長(御年75歳)」なんて言ったが、その歌声を耳にして、まだまだイケそう…と思ったのは自分だけでなかっただろう。何よりあのシトラスミントのような歌声は唯一無二。終盤にはブレバタ定番<Pink Shadow>に<Monday Morning>も飛び出した。

さて、来年はブレバタ50周年。何か起きるか、期待して見ていよう。