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『NASHVILLE DIRT』(70年)の存在により、スワンプ系シンガー・ソングライター愛好家に知られていたロブ・ガルブレイス。その評価軸をブルー・アイド・ソウル〜レア・グルーヴ寄りに移したのは、拙著ディスクガイド『AOR LIght Mellow』に2ndソロ『THROW ME A BONE』(75年)を掲載したのがキッカケだった。この2作目は09年に紙ジャケ仕様で初CD化。その間の04年にロブは自主制作で3rdソロ『TOO LONG AT THE FAIR』を出し、ビル・ラバウンティの名曲<Livin' It Up>をジャジーにカヴァーした。こちらの3作目は日本にはまったく入って来なかったが、2作目の初CD化に合わせて、我が【Light Mellow's Choice】で日本リリースが叶った。

今回リリースされた『WHERE I'VE BEEN』は、ジャケに小さく記されているように、69年から17年に録音されていたデモ音源やアウトテイク、ライヴ・レコーディング、リハーサル・テイク、未発表音源など、50年近くの間に溜まっていたテープを集成したもの。実を言うと、ネッド・ドヒニー『SEPARATE OCEAN』(14年)で注目された米Numero Groupからも、いつの間にか『DAMN IT ALL』なる未発表音源集がアナログ盤と配信でリリースされていて驚いたのだが、あちらは69年〜77年の音源が対象で、しかも目線はスワンプ。対して日本向けに新編集された『WHERE I'VE BEEN』は、最新音源を含み、斬り口は『THROW ME A BONE』寄りのブルー・アイド・ソウル〜レア・グルーヴである。

この『WHERE I'VE BEEN』の収録曲は20曲超。でもNumero盤『DAMN IT ALL』とのダブリはわずか5曲に止まった。アーリー70'Sの音源は、『THROW ME A BONE』用というより少しずつ録り溜められたものらしく、バックは当時ロブが参加していたデュバルの面々が務めている。またNemero盤対象外のレイト70'sデモには好曲多数。オープニング曲<Daytime's For Sleeping>は、00年代初めにランディ・グッドラムと共作したものだ。

内容が内容だけにロブ初心者にオススメできるシロモノではないが、『THROW ME A BONE』を愛聴し、プレAORの動向に興味がある人は面白く聴けるはず。南部産のスワンプやR&Bにまみれていた彼が、時の流れに伴って如何に洗練をまとい、都市型ブルー・アイド・ソウルへと変遷していったかのドキュメントがココにある。それはある意味、ボズ・スキャッグスとも通底するものだ。