leo sidran_cool sch.

今年5月、マイケル・フランクスの新作『THE MUSIC IN MY HEAD』リリースにちなんでご紹介した、リオ・シドランのマイケル・フランクス・ソングブック『COOL SCHOOL:The Music of Michael Franks』。こちらにポストしたように内容も充実しているので、国内盤で出せないか?、と動いてみたところ、先行発売していたWarner EU 盤のディストリビュートでは、日本は管轄エリア外。そこでエージェントを通じて話が進み、めでたくP-VINE【Light Mellow Searches】からこの5日に発売された。

その概要は先のリンク先のポストをご参照いただくとして、今回はリオが解説用のメール取材で饒舌に語ってくれたので、かなり中身の濃いライナーとなっている。しかも意外な事実が発覚。リオとマイケル・フランクスは近しい関係なのだと思いきや、リオ自身「直接会ったことは一度もない」と言うのだ。

でも実際は、マイケルの方が、リオがまだ幼かった頃に、あるパーティで会っているのを思い出したそう。でもリオはそれを覚えていなかった。
「それなのに僕は長い間、マイケルをとても近しく感じてきた。アーティストとしても人間としても。僕が尊敬するミュージシャンの多くが彼と繋がっていたからね。父に至っては、90年代に彼の楽曲をいくつかプロデュースしていたし…(93年『DRAGONFLY SUMMER』)」

リオがこのカヴァー集を作ろうと思い立ったのは、2つの大きな理由がある。ひとつは、前作『MUCHO LEO』(14年)を出した時に、ヨーロッパのジャーナリストや評論家が彼のスタイルをマイケルと比較したこと。そしてもうひとつが、17年にトミー・リピューマが亡くなり、彼にトリビュートを捧げたいと思ったこと。マイケルの時とは違い、トミーのことは赤ん坊の頃から知っていた。
「僕の人生には常に彼が存在していた。実際に会うのは、年に1〜2度だったとしてもね。僕が音楽に興味を示した時から、彼は僕を励ましてくれて、僕の音楽を聴いては誠実で前向きなフィードバックを与えてくれた」

リオにとってマイケルの音楽的魅力は、独創的でユニーク、かつ率直で誠実、という点。フェイヴァリットはトミーが手掛けていたワーナー初期の作品群で、そのリオの嗜好が反映されたか、収録曲にはマイケル初期の楽曲が多くなっている。そしてこのアルバムは、リオにとって「マイケルの曲を通じて自分自身を見つけ出すためのエクササイズ」だったと。

中でも一番幸せな発見は<The Cool School>。06年作『RENDEZVOUS IN RIO』に収録されていた新しい楽曲だ。

「最初のヴァース、“僕は恐竜なのかい? うん、その通りさ。僕はモーズやチェットを聴いて育ったんだ” という下りを聴いて、すぐにこの曲が僕とこのプロジェクトにとって重要な曲だと気がついた。この曲はアルバム・タイトルになり、僕はマイケルとデュエットした。しかもマイケルはレコーディングのため、特別に新たな一節を書いてくれたんだ。マイケル自身が歌ってくれたことは、本当にアメイジングだった」

ゲストは他に、スティーリー・ダンで知られるホーンのマイケル・レオンハートとジョン・エリス、リオが組んでいるユニットの相方:ジョイ・ドラグランド(vo)など。<Lotus Blossom>をデュエットしたのは、父ベンとも歌っていたクレモンティーヌ。“ウルグアイのカエターノ・ヴェローゾ” との異名を取るホルヘ・ドレクスレルも参加している。

Dr.Jazzと謳われるベン・シドランの息子らしく、多彩な才能を発揮するリオ。このカヴァー集で彼の存在が大きくクローズアップされることを祈りたい。