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イタロ・ディスコの雄:チェンジが、85年作『TURN ON YOUR RADIO』以来のニュー・アルバム『LOVE 4 LOVE』を発表 90年代の未発表音源集『CHANGE YOUR MIND』が10年に出ていたけれど、オリジナル新作としては、何と33年ぶりのリリースになる。00年代初頭に2nd『MIRACLES』(81年)、3rd『SHARING YOUR LOVE』(82年)、『CHANGE OF HEART』(84年)を世界初CD化したワーナー・ジャパン【ブラコン探検隊】は、実はカナザワ原案の企画だったから、このチェンジに対する思い入れは強い。もっとも、そのカナザワにチェンジの存在を教えたのは、まだデビュー前だった角松敏生。そして角松に「チェンジで歌っていたルーサー・ヴァンドロスのソロ・デビュー作がスゴく良いから、すぐに聴くべし」とインフォしたのが自分であった。

全15曲収録されている今回の新作だが、新録オリジナルはアタマ9曲。後半6曲はいわゆるリミックスやリプロ・ヴァージョンで、ルーサーが歌う<Searching>、ジョセリン・ブラウンがリードを取る<It's a Girl's Affair>などが入っている。後者などかなり大胆にアレンジされていて驚くが、この中ではユランダ・マッカロウが歌う<Let's Go Together>に魅力再発見。そしてルーサーのヴォーカルの破壊力が、今更ながら身に滲みて…

今回の新録セッションは、かつての中心人物ジャック・フレッド・ペトラスが87年に他界しているため、ペトラスの相方だったマウロ・マラヴァシと、初期ベースのダヴィデ・ロマーニが主導している。クレジットを確認すると、やはり鬼籍に入っているギターのマイク・キャンベルも1曲参加(リミックス曲除く)。果たして生前にリズム・トラックを録ったのか、何か残された音源を引っ張ってきたのは不明ながら、ペトラス以外の中核チームを揃えたマラヴァシとロマーニの心意気が嬉しい。

チェンジといえば、やはり初期代表曲<The Glow Of Love>や<Paradise>、<Miracles>といった熱血ディスコ・チューンをイメージしてしまうが、この新作はもっとスムーズ&アーバンに聴かせる印象で、ミディアム・チューンを柱にヴォーカルへ耳が行くような造り。旧作群に照らせば、ジミー・ジャズ&テリー・ルイスがプロデュースした『CHANGE OF HEART』の延長にある。そしてそのアレンジのそこかしこに、かつてのチェンジを髣髴させるフレーズやサウンドメイクを差し込んだ。

例えばタイトル曲<Love 4 Love>は、ペトラス&マラヴァシ主導時の初期チェンジみたいで、ストリングスやコーラスの編曲はシックっぽく聴こえる。メロウな<Friends>はディスコ・クイーン:エイミー・スチュワートのカヴァーであると同時に、実はイタロ・ディスコのサウンド・クリエイター:マイク・フランシスの代表曲でも。

今の時点のチェンジ復活は、ダフト・パンクやブルーノ・マーズが主導したディスコ・リヴァイヴァルの副産物なのは間違いない。でもそのブームに迎合することも、勢いに引きずられてしまうともなく、イッカリとチェンジ・マナーを貫いた。今回ヴォーカルを担ったタニア・ミシェル・スミスは、それなりのキャリアを持つ実力派シンガー。そりゃあ ルーサーやジョセリンに比べたら分が悪いけど、デボラ・クーパー並みには歌えていると思う。

そして、このチェンジと同じ座組みでこれから復活を遂げようとしているのが、ナイル・ロジャース&シック。超難産の上に完成したニュー・アルバムが間もなく到着する予定だが、ナイルはダフト・パンクに担ぎ出された張本人だ。なのでリヴァイヴァル・ブームとの距離をどう保っているのか、どうしてもそこが気になるな。