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07年にデビューしたRenajaのソングライター/サウンド・プロデューサー:新井現詞の、音楽活動デビュー50周年を記念したアニヴァーサリー・ライヴ@築地 Blue Mood。ソロ名義では、数年前に下北沢のCafe音倉で演って以来の、2度目のライヴになる。

バックを務めるグレムリンは、GS出身の新井が70年代に組んでいたグループ。今度のライヴには、当時の主要メンバーだった六川正彦(b)、井ノ浦秀雄(ds)、土屋潔(g)が参加した。この御三方、それぞれに大橋純子&美乃家セントラル・ステーション、久保田麻琴&夕焼け楽団、南佳孝のバックなどで活躍した実力派で、今もそれぞれ現役セッション・プレイヤーとして活躍している。何だか新井だけ表舞台から外れてしまった感だけど、元々ギターを弾いていた井ノ浦にドラム転向を勧めたというだけあって、当時からプロデューサー的感覚を持っていたのだろう。鍵盤は助っ人参加の寺田正彦で、グレムリン後から親しくなった林政宏がラスト何曲かをプレイ。サックスも美乃家にいた後藤輝男が担当した。コーラスは Renajaチームの ルネ&SHUMI。

かくいうカナザワも、新井さんとの付き合いは、もう十数年になる。まず04年に発行したディスクガイド『Light Mellow 和モノ669』(今年増版した『Light Mellow 和モノSpecial』のオリジナル)に、上掲ソロ作『IMPRESSION』(82年/録音78年)を紹介。それを機に、ガイド本編集者Y氏が ほとんど行方不明だった新井の活動状況を掴み、Renajaという新しいユニットを組んで初ライヴをやる、という情報をもらったのだ。そこで相方と足を運んで、ルネちゃん共々初対面。それからRenajaは手売りの自主制作盤を作ってジワジワと足場を固め、VIVID SOUNDの拙監修シリーズ【Light Mellow's Choice】から『THAT LADY』で正式デビューした。

歌声は思い切り甘くスモーキーなのに、喋ると極端なべらんめぇ調で話が長〜〜くなる新井さん。RenajaのライヴではMC禁止令が出ているが、今日は自分のソロ・ライヴゆえ、完全に放し飼い状態。案の定、話はアッチコッチに飛ぶは、知り合いの客を罵倒するわ… ゲストの石井一孝やコーラスのルネがリードに回ると、袖にはけるのではなく、客席の真ん中に割り込んでチビチビ飲みながらステージを観ている。まったく困ったオヤジで、甘美な歌と爆笑MCが寄せては返す、の繰り返し。キャパ100人前後の小さなハコだし、ある程度彼のキャラを知っているオーディエンスばかりなので許されるが、アルバム通りロマンティックな世界観のステージを期待していると、120% 裏切られる。それでも演奏はサスガで、歌声も衰えちゃない。歌うだけで喋らなければ、ちょっとカッコ良いオヤジなのだ。

『IMPRESSION』からの<イミテーション・ラヴ>でスタートしたステージは、アルバムからの<¥バタフライ>や<Set Me Free>、シングルのみ楽曲(CDにボーナス収録)を中心に、当時の未発表曲、それに近年の書き下ろし曲なども交えながら。Renaは珍しく、新井が SHO-YAに提供した楽曲をロックっぽいスタイルで歌ってくれた。

仮にRenajaを知らず、『IMPRESSION』を聴いただけで、初めてこのライヴに足を運ぶと、音楽とキャラのギャップの大きさに かなり面食らうだろう。その反面で彼の気性を知る人は、解き放たれた時の面白さにチョッピリ期待していた人もいると思う。クリティカルに見ればNGであっても、そうひと筋縄ではいかないトコロが、人の創る音楽の魅力のひとつなのだな。