b.champlin_wonderground

ご紹介が遅くなりました。先月17日に発売されたビル・チャンプリン、10年ぶりのリーダー・アルバムは、新たなグループ:ワンダーグランドを率いての『BREEDING SECRETS』。メンバーは愛妻でありロック・シンガーでもあるタマラ・チャンプリン、セッション・ミュージシャンのゲイリー・ファルコン、そしてビルという布陣。傍目に見ると「ビルのソロでイイんじゃない?」と思ってしまうが、ビル当人には何か強いコダワリがあるらしく、CTA(カリフォルニア・トランジット・オーソリティ)での来日時にサンプル盤を貰った時も、“これはバンドのアルバムだからね!”と強調していた。

さて、ビルのファンには、タマラとの夫婦随伴ぶりはよく知られるところ。ビルの以前のソロ来日公演にも参加して歌っていたので、その豪快なロック姐ちゃんぶりを知る人は少なくないだろう。ビルとの馴れ初めは、セッション・シンガーとして頭角を現した頃に参加した、81年のサントラ盤『SOME KIND OF HERO』。リチャード・ペイジが歌うタイトル曲で、ビルと一緒にコーラスを付けたのが最初だ。それをビルに気に入られ、ビルの2ndソロ『RUNAWAY』(82年)に参加。その後間もなくビルの再婚相手に収まった。タマラの最初のソロ・クレジットは、おそらく88年のスポーツ・コメディ映画『CHADDYSHACK II』のサントラで歌った、ビルとブルース・ガイチの共作/ジェイ・グレイドン制作による<Heart Of Glass>。その後は日本のプロジェクトに重用され、邦画サントラ『またまたあぶない刑事』や『もっともあぶない刑事』、角松敏生プロデュースの『VOCALAND』(96年)で歌っている。94年に初めてのソロ作『YOU WON’T GET TO HEAVEN ALIVE』を発表。近年はサンズ・オブ・チャンプリンにも名を連ね、15年には久々に<Dreamin' of Chagall>を配信リリースした。

対してゲイリー・ファルコンは、ほとんど無名と言って良い。80年代からシンガー・ソングライター/ギタリストとして地道に活動を続け、イエス『UNION』やロッド・スチュワート『VAGABOND HEART』(共に91年)を筆頭に、アリス・クーパーやエデヴィッド・リー・ロス、エドガー・ウィンター、ドン・ヘンリー、セルジオ・メンデス、ジャネット・ジャクソンらに関係してきた。14年には、“Falcone & Friends” 名義で、自主制作盤『EVANGELINE』を発表。そこにビル&タマラが参加した。他にもアンブロージアのバーリー・ドラモンド(ds)にスティーヴ・フェローニ(ds)、ジョー・ピズーロ(元ヒート)、マクラリーズ(cho)らが名を連ね、マイク・ポーカロが曲作りを手を貸した。

「このアルバムは、ゲイリーのソロ・アルバムに向けて一緒に曲を書くところからスタートしたんだ。その時点ではレコーディングの予定なんてなかったよ。ところがゲイリーは曲ができると、ものの5分と経たないうちにギターを持って録音を始めた。気がつくと、私もタマラもその作業に熱中してしまっていたね。私たちはもっと一緒に演るべきだと感じた。それでバンドを組むことにしたんだ」

収録曲は全13曲中7曲がビルとタマラ、ゲイリー、3人の共作。リード・ヴォーカルも3人で分担し、シカゴ時代のように楽曲の中でリード・パートを分け合った楽曲もある。8曲目<Evangeline>は、ゲイリーのアルバムからの再演。彼の嗜好はタマラに近いアメリカン・ハード・ロックらしいが、アコースティック・テイストや、時々顔を出すカントリー指向もまたゲイリーの持ち味らしい。

2人に引っ張られてかビルにしてはロック色濃いめながら、<Love Knows>は<Take It Uptown>の再演みたいな軽快シャッフルだし、ファンキーAORな佇まいの<Genius>もある。デヴィッド・フォスターが作ったシカゴ風パワー・バラードは聴けないけれど、逆に<They Don’t Make ‘Em Like They Used to>が90〜00年代のシカゴを髣髴させる分厚いロック・サウンドだったりも。

サポート・メンバーは、『EVANGELINE』にも参加したバーリー・ドラモンド(ds)、元カルデラのエディ・デル・バリオ(arr)とディーン・コルテス(b)、ビルの愛息ウィル・チャンプリン、スティーヴ・ポーカロ(Kyd)と父親ジョー・ポーカロ(perc)、ジョージ・ホーキンスJr.、それにナイト・レンジャーのケリー・キーギー(vo)等など。国内盤には、豪放なリフのアメリカン・ロック・チューン<What Will Be>と、小気味良いジャム・セッション風インスト<Popcorn>というボーナス曲も用意された。USではこの3人でライヴを予定しているそうだから、是非日本でも見たいモノである。