clapton_x'mas
有楽町〜日比谷界隈で空き時間ができたので、エリック・クラプトンのドキュメンタリー映画『LIFE IN 12 BARS』を観賞。クイーン『BOHEMIAN RHAPSODY』の影に隠れがちだけれど、これも音楽映画としてイイ出来。『UNPLUGGED』以降の比較的若い音楽ファンがクラプトンを知るには、格好の作品だと思う。ただ『461 OCEAN BOULVARD』からリアルタイムで接してきたオールド・ファンには驚くような新しい発見はなく、そこはちょっとガッカリ。クリームとビートルズ、ストーンズの時系列的並び、すなわちクラプトンのこの時にビートルズはこういう状況だった、という再認識事項はあったが…。個人的に一番興味深かったのは、『LAYLA』の制作ドキュメント。ただクラプトンにしろフレディ・マーキュリーにしろ、この当時のロック・ミュージシャンって、自堕落な時期があってこそドラマが生まれるのであって…。レコード会社やマネージメントの管理下でソツのない音楽活動をしている昨今のミュージシャンじゃ、こういう映画は作れんな

さて、映画は個人的に盛り上がりを欠いたけど、逆にまったく期待してなかったのに、意外に面白く聴けたのが、クラプトン初のクリスマス・アルバム『HAPPY XMAS』。初期ファンには「血迷ったか!?」と言われそうだけど、健康問題を抱えつつも、ギターを抱えた良きパパとなったクラプトンには、最適な企画モノなのではないか。

正直いえば、人気アーティストによるX'MASアルバムというのは、お気軽に作れるファン・サーヴィス作品であって、リリジャスな意味より商業的要素が強い。だから音楽的に聴くべきモノは少なく、オーケストラをバックにトラディショナルな聖歌を雰囲気たっぷりに歌うのが関の山。書き下ろしのオリジナル・ホリデイ・ソングがあれば、それだけでラッキーと思えてしまう。対して、こうしたシーズンズ・グリーティングに真摯な姿勢で挑む者もいて、山下達郎<Chrismas Eve>よろしく、時にエヴァーグリーンな名曲が生まれる。また誰もが知っているスタンダードな聖歌を、目いっぱい自分流にアダプトするアーティストもいて。BeBe & CeCe Winansが歌っている<Jingle Bell>やケニー・ランキン<Santa Claus Is Coming To Town>は、この時期になると聴きたくなる名アレンジのスタンダードX'masソングだと思う。

そうした意味で、このクラプトン『HAPPY XMAS』には全然期待していなかった。が、コレが実にクラプトンらしいブルース・アレンジのクリスマス・ソング集に仕上がっていて。ビング・クロスビーで有名なド定番<White Christmas>で幕を開けるけれど、これが何ともゴキゲンなブルース・アレンジで、思わずニヤリ。書き下ろしのクリスマス・ソングはわずか1曲だけながら、トラディショナルばかりではなく、ウィリアム・ベル=ブッカー・T・ジョーンズによる<Everyday Will Be lLke A Holiday>やオーティス・レディングも歌っていた<Merry Christmas Baby>などサザン・ソウル系のチョイスもある。ブルース系では、フレディ・キングやローウェル・フルソン所縁のホリデイ・ソングも演っていて。驚いたのは、今ドキのR&Bシンガーであるアンソニー・ハミルトンの聖歌カヴァーが2曲もあること。オマケにトラディョナル<Away In A Manger>も彼のX'masアルバム『HOME FOR THE HOLIDAYS』(14年)収録曲だったから、彼に対するクラプトンの傾倒は小さくないようだ。

プロデュースは、もはや安定のクラプトン=サイモン・クライミー。バックにはジム・ケルトナー(ds)、ネイザン・イースト(b)、ドイル・ブラムホールIII(g)など。素材は確かにクリスマス・ソング集だけれど、内容的には完全にオリジナル・アルバム級。個人的には少々ユルすぎた『OLD SOCK』(13年)や最新オリジナル作『I STILL DO』(16年)よりも気に入ってる