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メロウ・グルーヴ界隈では結構前からネタに挙げられていたオランダ人ギタリストのリーダー・バンド:ラチュールのワン&オンリー作が、今月初旬に紙ジャケットで初CD化された。自分もアナログ盤を持っているので、いつか復刻したいなー、と思っていたネタだが、AORとしては81年作という年代以上にミクスチャー感が強く、印象としてはUSより2〜3年遅れた音作り。例えばフュージョン系AOR作品なら、81年にはリー・リトナー『RIT』がヒットしているワケで、そこはやはりヨーロッパ物という気がしている。

でもそうした背景を脇に置いて純粋に音で判断するなら、やはりコレは面白いな、と。

リーダーのクリス・ラチュール(ジャケの顔の人物)を中心とするバンド・メンバーの何人かは、オランダ統治下にあったインドネシアのモルッカ諸島にルーツを持つ、アジア系移民の子孫たちだそうだ。ジャズやクラシック、あるいはそのエリアのトラディショナルな音楽(イタリアだったらカンツォーネとか)に影響されがちな欧州産AORとはチョッと違って、妙にメロウだったり、トロピカルだったりするのは、そうした血筋から来るらしい。本作のコ・プロデューサーでアレンジも担っているハッセル・デ・ヴリースは、同じような出自を持つオランダのAORアーティスト:ダニエル・サフレカを手掛けた人でもある。ライナーではサンタナ一派のマロやアステカとの共通項を指摘しているけれど、合わせてカラパナやセシリオ&カポノなど、ハワイ勢からのインフルエンスも。何処まで聴き及んでいたは不明ながら、かなり違いベクトルが感じ取れる。インスト曲を収めるなど演奏自体が前に立っていて、音楽的ポテンシャルが高い点では、ミュージック・マジックあたりに近いかもしれない。そのハワイ勢がこよなく愛すジョン・ヴァレンティなら、81年作『I WON'T CHANGE(女はドラマチック)』ではなく、やはり76年の『ANYWAY YOU WANT』。

《シティ・ソウル》の括りで再発されたように、アーバンというほどソフィスティケイトされておらず、程よい熱さ、イナタさを内包する。その感覚を、“あー、なるほどね” と理解できる方なら、ゲットして損はない。