dr.hook

正月気分もそろそろ終わり…、というコトで、ちょっぴり悲しい訃報を昨日に続いて。70〜80年代に人気を博したドクター・フックの中心人物レイ・ソウヤーが、米フロリダ州デイトナビーチで逝去。死因は明らかになっていないが、最近はずっと闘病生活を送っていたらしい。実のところ、逝去の報は元旦早々に飛び込んできたのだが、年明け一番のポストがお悔やみ情報なのも憚られるので、一旦は自分の胸の内に止めた次第である。享年81歳。

ドクター・フックは68年の結成。音楽活動を続けるも一向に卯建の上がらないソウヤーが転職を考えた時、交通事故に遭って右目を失明。それを機に再びやる気を出し、アイパッチとテンガロン・ハットでステージに立つようになった。するとそれが彼のトレードマークとなり、その風貌がピーターパンに登場するフック船長に似ていたことから、バンドはドクター・フック&ザ・メディスン・ショウと名乗るようになった。レコード・デビューは72年。いきなり<Sylvia's Mother>を全米5位のヒットにして、人気バンドに仲間入りしている。

メディシン・ショウというのは、薬の行商人が客寄せのために芸を披露する舞台のこと。日本で言えば、ガマの油売りの向上みたいなモノか 海の向こうで大規模なものは、ミュージシャンはもちろんマジシャンやコメディアンを雇って、朝まで豪華なミュージカル・ショーを繰り広げたそうだ。カントリー界の大物ハンク・ウィリアムズやジミー・ロジャース、ロックン・ロール方面ではリトル・リチャードも、こうしたメディション・ショウで下積みを経験したらしい。

だからドクター・フックも、カントリー・ポップを基調としながらも、どこか猥雑ないかがわしいニュアンスを漂わせていた。2ndアルバムの邦題なんて、『やたら汚ないセカンド・アルバム(原題:SLOPPY SECONDS)』というから、ちょっと可哀想なほど。でもその一方で、ならず者がふとした瞬間に見せる哀愁味を捻出するのが巧く…。74年のキャピトル移籍と同時に名前をドクター・フックに縮め、併せて音楽性を男気溢れるメロウ路線にシフト開始。そこからようやく、足が地についた人気を得るようになった。この時期の最大のヒットが、80年に全米5位をマークした<Sexy Eyes>、そしてこの曲を収録した改名後5作目のアルバム『SOMETIMES YOU WIN(愛はいつも涙)』である。

見た目やバンド名の由来から、ソウヤーが牛耳るリーダー・バンドのように見られるドクター・フックだが。でも実際はツー・トップ体制が敷かれていて、もうひとり、デニス・ロコリエールというシンガー・ソングライターがいた。それどころか、曲作りの面では、圧倒的に彼の方が貢献している。もっともこの頃から外部ライターの楽曲を多く取り上げるようになり、ロバート・バーンやエディ・ラビットの作品ををピックアップ。当然ながら、それに比例してAOR度も上昇した。<Sexy Eyes>に象徴されるように、ニュージャージーのバンドでありながら、マイアミやナッシュヴィル、マッスル・ショールズなど、洗練された南部サウンドに近い質感を持っているのが彼らの特徴といえる。

でもそれは長く続かなかった。80年代に入って再びカサブランカへ移籍したのは良かったが、レーベルの不振〜閉鎖に伴って、彼らの活動もジリ貧となり、レイの離脱を招いてしまった(後に復帰)。

今となってはサスガに過去のグループというイメージのドクター・フックだけれど、<Sexy Eyes>はAORの名曲として文句のないデキだし、他にもライトメロウなイイ曲が隠れている。幸い、主要作はCDでゲットしやすいので、レイ・ソウヤー追悼を兼ねて、是非チェックしていただきたい。

Rest in Peace...

ray sawyer