sano tomomi

昨今のシティ・ポップ・ブームには、良しにつけ悪しきにつけ、色々と思うトコロあり。昨日の、とある打ち合わせでもそんな話が出たけれど、ここ1〜2年でデビューしてきた新人たちはともかく、それなりのキャリアを積んできた人たちは、無闇にその動きに惑わされる必要などないと確信している。若手の中にだって、 そのブーム化に違和感を感じて自分の信じるモノを演る、と語る頼もしい連中が出てきているのは嬉しいことだ。

それに同調できるヒトにこそ聴いて欲しいのが、このサノトモミの3rdアルバム。名前を聞いてもピンと来ない方が多いかもしれないが、彼女はクニモンド瀧口率いる流線形の、一番最初のゲスト・シンガーだったヒト。流線形の女性シンガーというと、江口ニカこと一十三十一(ヒトミトイ)のイメージが強いのだろうが、流線形1stで歌っていたクリア・ヴォイスの持ち主は、このサノトモミだ。

昨年11月リリースで、カナザワが看板を貸しているイベント:Light Mellow Summit にもゲストに来て歌ってくれたので、ご紹介がすっかり遅くなってしまったが、ソロ・デビューして13年間でアルバム3枚という超スロウ・ペースなので、そこは許していただけるでしょう。現在は北海道在住で、まさにゆったり、アクセクせずに自分のペースで活動を続けている。

前作では<都会>(大貫妙子)、<きっと言える>(荒井由実)、<夢は波に乗って<(山本達彦)のカヴァーを取り上げていたが、今作は全7曲がこのアルバム用に提供されたオリジナル。クニモンド氏も1曲書き下ろし、トラック・メイクで協力している。それ以外のトラックはkydの林有三の手によるもので、スピード感が心地よい<Drivin'>は、林自身が作曲を手掛けた。林は角松敏生バンドの初期ブレーンで、流線形のオリジナル・メンバーでもある。流線形1st『CITY MUSIC』(03年)は、クニモンド氏はもちろん、彼の貢献が小さくなかった。

アルバムは、タイトルが『MELLOW AND SPACY ELE POP』であるように、ややチープなアナログ・シンセサイザーとシンドラムで構築されている。敢えて言ってしまうと、ズバリ、ラー・バンドの影響大。でもそのスキマだらけのキラキラ・サウンドが如何にもアーリー80'sっぽく、懐かしさと新鮮味を同時に運んでくる。当時を知る世代は、“今更コレかよ” と思うだろうが、時はもう10年代終わり。今の20〜30歳代はその当時の音を知らないのだ。近年になってYMOやクラフトワークの普遍性が面白がられるのも、ベクトル的には同じなんだと思う。

で、そこに乗るトモミさんのヴォーカルがまた魅力的。甘酸っぱい歌声と冷ややかに突き放すスタイルで、サウンドにフィットしている。ヴォーカル・スキルや表現力で聴かせるタイプではないけど、パステル系というか、フワッと消えてしまうような淡い歌声に 返ってソソられるのだ。打ち込みに関しては、狙いとはいえ、もう少し工夫の余地がありそうな楽曲もあるけど、この声の持ち味で納得してしまうんだな。