clydie king

年が明け、1月がまだ半分も過ぎてないというのに、またまた訃報。L.A.でセッション・シンガーとして活躍していたクライディ・キングが、7日に死去した。享年75歳。今となっては知る人ぞ知る、という存在だけれど、当ブログのお客様であれば、その歌声は必ず耳にしている。何せスティーリー・ダンに重用され、名盤『AJA』の<Black Cow>や<Deacon Blues>、<I Got The News>でコーラス隊を務めたほか、『CAN'T BUY A THIRILL』や『THE ROYAL SCAM(幻想の摩天楼)』でも歌っていた人なのだから。

クライディは1943年、テキサス州ダラス生まれ。10代で本格的に歌い始め、56年にリトル・クライディ&ザ・ティーンズ名義で7インチ・デビューしている。やがてレイ・チャールズのコーラス・グループ;レイレッツのメンバーになり、71年に1stソロ『DIRECT ME』を発表。その後、ブラックベリーズという3人組ヴォーカル・グループを組んで、スティーヴ・マリオット率いるハンブル・パイのコーラスを務めた。その後ブラウン・シュガーというMOR系ヴォーカル・グループのフィーチャリング・シンガーとなるが、スタジオ・ユニット的な成り立ちだったためアルバム1枚で消滅している。

その後からローリング・ストーンズやエルトン・ジョン、ジョー・コッカー、リンダ・ロンシュタット、リタ・クーリッジなど、多くのセッションに起用され、76年にこの2枚目のソロ『RUSHING TO MEET YOU』を発表した。彼女のソロ作はどれもマイナー・レーベル発で、オリジナル盤は激レアだが、特に ジャクソン・シスターズで知られる Tiger Lilly からのコレは一番入手困難。オマケにジャケとミックス違いの盤が別のローカル・レーベルからも出ているそうで、そうなるともうワケが分からない。そもそもTiger Lillyも何処かの成金が節税対策のために創ったレーベルと言われ、アルバムだけ作って後は放ったらかしで売る気などなかったとされる。

参加メンバーはエド・グリーン(ds)、ウィルトン・フェルダー(b)、レイ・パーカーJr.(g)、ソニー・バーク(kyd)、メリー・クレイトン(cho)等など。時代的にディスコへの意識も垣間見せるが、名手揃いなだけに手堅いシティ・ソウルを聴かせる。声を振り絞ると、時にティナ・ターナーっぽいハスキー・ヴォイスなるクライディだが、そのファンキーでパッショネイトな歌いっぷりが魅力的。ロック勢に好まれたというのも、そのヴォーカル・スタイルあればこそ、だろう。

80年代は、ゴスペルに接近したボブ・ディランに気に入られ、『SAVED』『SHOT OF LOVE』『INFIDELS』などに立て続けに参加したが、その後は華やかな活躍はなかった。

Rest in Peace...