pyramid 4

先日、井山大今のライヴを観ていて、ふと思い出したのが、このピラミッドの4作目。9月のリリース直後に購入してすぐに流し聴きし、何か前3作とは違った雰囲気を感じ取って、“近いうちにチャンと聴き直そう” と思ったまま、約4ヶ月も放置プレイしてしまった。大変失礼致しました。でもこのアルバムが前作から7年半ぶりだったとは… 途中に新録曲入りベストがあったとはいえ、ホンの2〜3年のことのようにしか感じていなかった


鳥山雄司(g)、和泉宏隆(kyd)、神保彰(ds)の3人が、実は高校〜大学の同窓生で旧知の仲というのは有名な話。このピラミッドは、鳥山がその2人に「昔みたいに…」と声をかけたのがスタートだったという。しかし3人が3人とも多忙な身。1st『PYRAMID』(05年)、2nd『以心伝心』(06年)は立て続けに出たが、3枚目『PYRAMID 3』が出たのは5年後。そしてまた7年半のブランクを置いての復活になった。でもこのグループがマンネリ化どころが、3作目、4作目と、尻上がりに良くなっているのは、実はヘタに活動をレギュラー化せず、3人のスケジュールとモチヴェーションが一致した時に演る、というスタンスを守っているからだと思う。もちろんそれは、ビジネス以前に友達同士の信頼関係が確立している間柄だから。しかもそれぞれが充分キャリアを重ね、事務所やレコード会社に縛られないポジションを確立していることも必要な条件だ。

それでもこの4作目が一番良いと感じたのは、オリジナルのクオリティが一段と高くなり、カヴァー曲とのギャップが取っ払われた結果のように思える。バンド・クオリティは結成時から変わらないが、学生時代の仲間で組んだからか、その頃コピーしていた楽曲を今様に聴かせることにバンドのアイデンティティがあるように感じていたのだ。ハッキリ言えば、青春時代から深い愛着を持っている曲を、どう面白おかしくカッコ良く聴かせるのか。そこにメンバーの意識が集中していたと思ってきた。だから初期オリジナル楽曲には、サラッと手慣れた感じでプレイした印象の曲が多かった。でもブランクが長くなった3作目、4作目ではオリジナルにも時間を費やしたか、リフレッシュされていると感じた。カヴァー曲に向かっていたアイディアがオリジナルにも、というか…。中盤にカヴァーを固め、前半と終盤にオリジナルを持ってきたアルバムの構成も、両者のギャップを埋めるのにひと役買った気がする。

今回カヴァーしたのは、ブラザーズ・ジョンソンの楽曲で、クインシー・ジョーンズも取り上げた<I'll Be Good To You>、ベスト盤で先にお目見えした<Captain Caribe>、そしてアース・ウインド&ファイアー<Runnin'>。この<Runnin'>、元々がカッコ良い楽曲だが、このピラミッド版がまた、それを凌駕するほどにカッコ良く、コーラスも映えている。ゲストには葉加瀬太郎の名も。

フュージョンとかスムーズ・ジャズのような行儀の良いサウンドから、よりアグレッシヴで刺激の強い音でまとまってきた今作。ロック度を増した鳥山のギター、プログラムと対峙しながらキレまくる神保のタイコ、そしてピアノへのコダワリを半ば封印したような和泉の多彩な鍵盤ワークと、メンバーは少しづつ前3作と違う面をアピールしている。マスタリングにUKのエンジニアでグラミー受賞歴もあるティム・ヤング(The Clash、Elton John、Massive Attackなど)を迎えたせいもあって、そのシャープなサウンドが、四角四面の和製フュージョン・シーンに喝を入れてくれることを願うばかりだ。