bruce blackman

年末〜年始の大掃除で、山積みだったCDの中から救出したネタのひとつ。76年に全米3位と大ヒットした<Moonlight Feels Right(恋のムーンライト)>で知られるポップ・ロック・バンド、スターバックのリーダーだったブルース・ブラックマンのソロ 17年作。ジャケのイメージ通り、お気楽でゆる〜いB級トロピカル・グルーヴが満載の、愛すべき一枚だ。

ご本家スターバックは最近すっかりAOR扱いされているけれど、拠点は南部アトランタで、音楽スタイルは同郷アトランタ・リズム・セクション(ARS)に近かった。つまり、メロウネスを孕んだ南部産ポップ・ロック。ARSの前身は<Spooky>や<Stomy>で知られるクラシックス IVだけれど、スターバックのブルース・ブラックマンとマリンバ担当ボ−・ワグナーは、ソフト・ロック・マニアに再評価されるエアニティーズ・チルドレン出身だったそうだ。スターバックは79年代後半に3枚のアルバムを出していて、最初の2枚は国内盤紙ジャケや輸入盤2in1で入手可(紙ジャケ盤『MOONLIGHT FEELS RIGHT』のポスト)。なので代表曲は簡単に聴けるけど、一番AORしているのは、未CD化の3作目『SEARCHING FOR A THRILL』なのよね。

80年代後半以降、ブラックマンは音楽活動から離れていたようだ。ところが14年に、初めてのソロ・アルバムを自主リリース。そこでは<Moonlight Feels Right>をセルフ・リメイクしている。

そしてこの17年作。タイトルを見ても分かるように、シッカリ “Yocht” と謳っていて、ブランクが長かった割には結構あざといッ もちろんヒット曲も大胆なアレンジで再カヴァーしていて、<Moonlight Feels Right Dreamscape>と題されている。早い話が件の曲の夢見心地スロウ・ヴァージョン。でもそれを一緒に演っている人を知って驚いた。なんと、80年の激レア・プライヴェート・プレス盤にして、なかなかのブルー・アイド・ソウルを聴かせてくれたジェローム・オールズさんなのよ((初CD化時のポスト) 彼もアトランタの人だから、現地音楽シーンの何処かで交流が生まれたのだろう。

他にもスターバックの看板だったマリンバ奏者(パーカッションも)ボー・ワグナーと、ベースのジェイムス・コブが参加。楽曲管理は Starbuck Music となっていて、強い愛情を持って音楽制作に戻ってきたことが伝わってくる。レオン・ヘイウッドが68年に発表した< It's Got To Be Mellow>のカヴァー以外は、すべてブラックマンのオリジナル。とはいえ、サンタナ<Smooth>の直球引用もあったりして、良くも悪くもマイナーっぽさがプンプン でもアートワーク同様、その安っぽさがどうにも憎めない。作りは若干チープながら、<No Conversation>なんて哀愁味溢れるAOR名曲も。<Some People>は英国ポップ風の美メロ・バラード。波にゆらゆら揺れながら口説きのBGMで聴かされたら、女性は思わず頷いてしまうのではないかな? 全体としてはラテン・ポップ中心ながら、他にも幅広い要素を取り入れているのは、何処かドクター・バザーズ・オリジナル・サヴァンナ・バンドに通じる。

元来、米国で流行り始めた “ヨット・ロック” には、リアルタイムのAORを軽く見下した嘲笑的視線が含まれていた。それをサンダーキャットが覆してボーダーレスな空気感が生まれ、当時を知らない若いファンが増えつつある。AORとヨット・ロックはイコールではないけれど、AORのメロウネス、ゆる〜い部分をヨット・ロックが象徴しているのは確か。その辺り、AORをコケにしてきたウルサ方の音楽ファン、音楽関係者たちは、今のヨット・ロック潮流をどう思っているのだろう? あのミュージック・マガジン誌の特集:創刊50周年記念ランキングの2月売り3月号のテーマは、まさにAOR〜ヨット・ロックだそうだ。