lady gaga_allie

見逃した…、と思っていたら、まだ地元シネコンで上映していたため、慌ててお出掛け。昨日のグラミーでは、一部に<Shallow>のスウィープを期待する声があり、カナザワも主要部門ひとつぐらいはイケるんじゃないかと思っていたが、結局、ノミネートされた主要2部門はどちらも獲れず終い。ガガ&ブラッドリー・クーパーでは、最優秀ポップ・パフォーマンス(グループ/デュオ)を受けただけで、今イチ盛り上がらなかった。パフォーマンスでも、ブラッドリーは英国アカデミー賞授賞式に出席するため欠席で、ガガとの共演はならず。衛星中継でのデュエットあるかも、なんて期待も寄せられたが、結局ガガ単独の力強いパフォーマンスが拝めただけだった。

それでも女性の活躍が目立った中、現役大物スターのオーラはハンパなく、「やっぱり映画を観とかなくっちゃ!」と思わせられたのは事実。ちょっと『BOHEMIAN RHAPSODY』のメガヒットの陰に隠れてしまった感があるものの、内容も充分楽しめるモノだった。それこそストーリー構成だけで考えたら、フレディの個性とライヴ・パフォーマンスに頼った感のある『BOHEMIAN RHAPSODY』よりシッカリした、もっと映画らしい映画だったと思う。 

もちろんツッコミ処はいくつかあって、例えば、南部らしい王道アメリカン・ロックのバラードで一躍脚光を浴びたアリーが、ソロ・デビューの時には今ドキのダンス・ポップになってしまうあたり、違和感バシバシ。実際に、コンペ優勝者がデビューするとドラスティックに音楽性が変化していることはままあるが、アリーの場合は後ろ盾がある設定なのに…と思った。でもまぁ、そこは映画。何よりガガの演技が板についていて、実は案外、素のままのガガを見せるチャンスと捉えていたのかな?と思えた。

ド派手なファッションと歯に衣着せぬ物言いで、強い女のイメージがあるガガ。しかし昨年、全身に激しい痛みを伴う線維筋痛症を患っていることを表明し、ツアー中止としばし表立った活動を休む宣言をした。そこに公開されたのが、この『A STAR IS BORN』。しがないナイトクラブで歌っていたアリーが、アル中と難聴に苛まされながら活動を続ける下降線のロック・スターと出会い、封じ込めていた自分を解放してスター街道を走り始める。バーブラ・ストライサンドが演じた前回作は、もうほとんど覚えていないけれど、もしかしたらガガは、新しい自分をアピールするその前哨戦として、この作品を選んだのかも、と思った。ストーリーの中で、急に注目されて自分を見失い、プロデューサーの言うなりになっていくアリー。そして、ありのまま魂の歌を歌えとアドヴァイスするジャック。そこにガガの本音が見え隠れしていた、と言うのは、自分の深読みだろうか。

イタロ・アメリカンで、ストリッパーとして稼いでいた時期もある苦労人ガガだけれど、実家は裕福。音楽学校を優秀な成績で出た、という話も聞いている。彼女が似た経歴を持つマドンナに憧れ、フレディ・マーキュリーやデヴィッド・ボウイ、エルトン・ジョンといったエンターテイナーに心酔していることは有名だけれど、実はかなりの知的戦略家だ。健康問題を抱えた今、ずーっとヒットメイクの第一線にいることの重圧から逃れたいと考えても、何ら不思議ではない。だとすれば、このタイミングで、もっと自然体で歌えるようにギア・チェンジすべく、この映画に橋渡しをさせたのではないか。。

ガガの活動スタンスに一目置きつつも、その音楽や楽曲には今までほとんど興味が持てずスルーしてきた。でもそれがこの映画で、初めてマトモにガガの歌が心の中側に入ってきた気がしている。 SNS
で誰かが、「初めてガガの素顔を見たかも」なんて書いていたが、その気持ちがよく分かる。奇抜な髪型やファッションに目が行くから、意外に顔を見てないんだよな。かく言う自分も、ガガってこんな顔だっけ、と思ったもの…

さて、ガガが次の一手をどう打つか、ちょっと楽しみになってきたな。