awb_cut the cake

アヴェレイジ・ホワイト・バンド、15年に発売した拙監修リイシュー・シリーズの新装盤が、一気に7作、再登場。19年最新リマスター+ボーナス・トラック新規追加で、ライナーも最新情報を盛り込むなど手を入れている。今回リイシューされる7作は、73年のデビュー作『SHOW YOUR HAND』から、お風呂ジャケで知られる78年作『WARMER COMMUNICATIONS』まで。前回シリーズでは2枚のレア・トラック集に分散していた楽曲を、然るべきアルバムにボーナス収録したのが今回の目玉だ。

その7枚から、ここではアヴェレイジ・ホワイト・バンド(以下AWB)の人気を決定づけた75年の傑作3rdアルバムをご紹介。

2nd『AVERAGE WHITE BAND(通称ホワイト・アルバム)』を引っ提げての米国ツアーをL.A.のトルバドール公演で締め括ったその晩、打ち上げパーティーで、何とドラムのロビー・マッキントッシュがオーヴァードースで急死。一方シングル・カットされた<Pick Up The Pieces>は、憔悴するメンバーたちをよそにチャートを駆け上がり、翌75年2月には全米首位を獲得した。こうなると、バンドに長期停滞は許されず、動かざるを得なくなる。どうやらクルセイダーズのスティックス・フーパーをゲストに迎えてこなしたギグもあったらしいが、最終的にはメンバーとのセッション経験があり、当時はブラッドストーンに在籍していたスティーヴ・フェローニを迎え入れることになった。ブラッドストーン参加前のフェローニはブライアン・オーガーズ・オブリヴィョン・エクスプレスにいたが、実はその時も、AWB結成に動いたロビー・マッキントッシュの後任だったという縁。こうして新生AWBの第1作目として作られたのが、この『CUT THE CAKE』であった。プロデュースはもちろん、彼らの人気確立の立役者アリフ・マーディン。

全米10位とヒットしたタイトル曲<Cut The Cake>、同じくR&B22位/全米33位を記録し、最近は頻繁にサンプル・ソースに使われる<School Boy Crush>など、人気曲が多い本作。でも極め付けはやはり、リオン・ウェア作<If I Ever Lose This Heaven>だろう。オリジナルは、クインシー・ジョーンズがリオン自身とミニー・リパートンに歌わせて『BODY HEAT』に収めたもの(R&B71位)。だがアラン・ゴーリーとヘイミッシュ・スチュアートがヴォーカルを分け合うAWB版は、クインシーを上廻るR&B25位/全米39位をマークし、今ではコチラが定番と言っていい。初期リハーサルからのレパートリー<How Sweet Can You Get>、ノー・クレジットでブレッカー・ブラザーズが参加したとされる<Groovin’ The Night Away>も、注目したい楽曲だ。好バラード<Cloud>などもあって楽曲の粒が揃い、アルバムとしての完成度は一番人気の前作以上。初期AWBの濃厚さが好きならば、素通りは許されぬ一枚である。

ちなみに今回リイシューの2nd(ホワイト・アルバム)は、当時お蔵入りした初回ヴァージョン9曲(通称クローヴァー・セッションズ)を含む豪華仕様。『FEEL NO FRET』以降の作品は春頃の発売予定で、AOR好盤『SHINE』を始め、再結成後のアルバムも出ることになっている。