nishimatsu 1 (1)nishimatsu 2 (1)

80年代に2枚のアルバムを出し、ナイアガラ界隈のポップ・フリークスから高い評価を受けた西松一博。今剛や林立夫らが組んだアンビエント系ユニット:ARAGONのメンバーとしても知られながら、いつしか表舞台から消えてしまったが、その西松のソロ2作が、タワーレコード限定の Tower to the People と我が Light Mellow Pick'sのコラボ企画で、遂にCD復刻された。81年の1st アルバム『GOOD TIMES』は初CD化。85年の2nd『貿易風物語』はオンタイムでCDが出ていたが、昨年アナログ盤で復刻されたのに続き、今回は初めてのCD再発となる。

西松は長崎の生まれで、福岡のライヴハウス照和を拠点に活動。ヤマハのポピュラーソング・コンテスト(通称ポプコン)九州大会出場を機に、デビューに至った。そして81年に、井上鑑と今剛のサウンド・プロデュースで生まれたのが、1st『GOOD TIMES』である。タイミングは寺尾聰<ルビーの指環>がチャート首位に立ち、アルバム『REFLECTIONS』が爆発的に売れていた最中。そしてその音は、井上・今がアレンジを分け合っているだけにパラシュート色全開。実際パラシュートのメンバーがこぞって参加し、コーラスにはEVEや木戸泰弘、そして元クラフトの三井誠がクレジットされている。ただし楽曲そのものは、のちにナイアガラ系ファンに見染められるだけあり、オールド・タイミーなポップ・ソングが多数。今のアレンジがアーバンな仕上がりなのに対し、井上編曲はジャズにフレンチ、サヴァンナ・バンド風など多彩さを前面に打ち出した。ジャケのサングラス姿は、浜田省吾や杉山清貴、黒住憲五を髣髴させるが、歌声やヴォーカル・スタイルは何処かスターダスト・レビューの根本要似だったりして

ボーナス6曲の内訳は、アルバム未収シングルが4曲。“西松一博 by ARAGON” 名義の2曲は、83年に発表されたアニメ『クラッシャージョウ』のイメージ・ソングだ。これは85年に発表されるARAGONのアルバムの前哨戦的シングルであり、西松の2ndソロ『貿易風物語』にも深く関わっている。

商業的成功には縁遠かった『GOOD TIMES』だが、寺尾の成功を経た井上と今は互いに関係を深化させ、“スティーリー・ダンのような難しい音楽で成功してやろう”という共通認識を持った。そして作ったのが、井上の初リーダー作『予言者の夢』と『CRYOTOGRAM』(共に82年)。そしてそこにコ・サウンド・クラフトマンとして参加したのが、シンセサイザー・プログラムのスペシャリスト:浦田恵司である。そして今と浦田、西松、林立夫、桑名正博&ティアドロップス出身の鍵盤奏者:難波正司が ARAGONのメンバーに。その最初の成果が、『GOOD TIMES』のCDボーナス曲になった<飛翔(NEVER END)>と<Bloodbath Nightaway>だった。しかしそこから2年後に発表されたARAGONの初アルバムは、エクスペリメンタル且つ斬新すぎてリスナーからは乖離。最新機材を駆使した制作費も膨大となり、ユニットは自然消滅していった。でもそれにもめげず創作を続けた西松と難波が、西松の2nd『貿易風物語』を完成させることになる。

『貿易風物語』の基本コンセプトは、前作にもチラリ覗いたドクター・バザーズ・オリジナル・サヴァンナ・バンド〜キッド・クレオール&ザ・ココナッツ系の無国籍ムラート・ミュージック。と同時にデジタル・サンプラーがようやく出回りだしたこの時期に、ほぼ2人だけで創り上げたポップ作品として特筆すべき先進性がある。中でもマシン仕掛けの偽スウィング・ジャズ<三文文士の恋・ベニーア ライナー>は、山下達郎が自分の番組で紹介。それが元で、このアルバムはナイアガラ・ファンに知られるトコロとなったらしい。また無機質ビートにエキゾティックなヴォーカルが乗る<A Night Of Blue Roses>、ドライなムード歌唱<香港慕情>が、それぞれCMやラジオのテーマ曲に使用されている。

当時はマニアックな評価に甘んじたが、その頃の時代的感性が一旦反故にされた現在の再評価機運は、素直に喜ばしい。なお西松自身は現在、地元九州の音楽学校で後進の指導にあたっているそうである。

Good Times (+6)<タワーレコード限定>
貿易風物語<タワーレコード限定>
Aragon +4<タワーレコード限定>
Aragon<限定盤/アナログ>