vladimir cetkar

ニューヨークから届いた《都会派ソウル × AOR × クロスオーヴァー》究極の傑作!!

…というのが、CDオビに掲げられたキャッチコピー。究極の傑作かどうかはともかく、《都会派ソウル × AOR × クロスオーヴァー》と並べてしまったレーベル担当者の気持ちはよ〜く分かる。言葉本来の意味で言えば、そのすべてを引っ括めての “クロスオーヴァー” で充分と思うけど、何かもうひと味強調するとなると、こうなってしまうな。

ヴラディミール・チェトカーは、マケドニア出身、ニューヨーク在住のシンガー/ギタリスト/プロデューサー。前作に当たる13年作『Heavenly』が評判になったそうだが、カナザワは本作が初耳。その彼が5年ぶりとなるニュー・アルバム、通算3作目のスタジオ作を出したというワケだ(他にライヴ盤があるらしい)。

より分かりやすく直球表現すれば、“インコグニート・フォロワー” もしくは “ポスト・ブルーイ” 。ただし正確を記すのなら、インコグニートより シトラス・サンだろう。ジョージ・ベンソン張りとされるギター・ワークも、ベンソンよりむしろジム・マレンを思わせる。もっともマレンじゃ渋すぎてウリにならんが… 元を正すなら、間違いなくウェス・モンゴメリー。渡米のキッカケもバークリー音楽院でジャズ・ギターを学ぶためで、卒業後の04年にニューヨークへ移住した。

ポスト・インコグニートという説明だけで、ジャズ・ファンクやアシッド・ジャズ、アーバン・ソウル、80'sブギー周辺を網羅していることは伝わると思うが、ココまで巧くこなす器用な人は、今ではホントにブルーイくらい。そのうえ収録曲の半分はインストで、歌モノとインストが小気味よく交互に攻めてくる。つまりは、それだけインストにも比重を置いている、ってコト。実際ヴォーカル・スキルよりもギターの方がはるかに上級レヴェル。初めて買ったレコードがマイケル・ジャクソン『OFF THE WALL』だそうだし、「歌わなければ、1人のアーティストとして完全なものにはならない」との発言もあるから、歌モノも無理なく自然体でやっているのだろう。ただしヴォーカル曲の方は少々類型的になる嫌いアリで、タイトル曲などは120%シック。とりわけストリングスやホーン・アレンジの優れ技が、グルーヴ感を一層引き立てる。それでもディスコ・チューンの半ばにビバップのスキャット・ソロを挟み込むなど、ジャズの出自は忘れていない。また<Travel The World>は、エヂ・モッタが歌ってもハマリそうで、新しい動きにもアンテナを延ばしているようである。

それだけに日本盤ボーナスのリミックス2曲は、ちょっと微妙か。彼のスタイルからすればダンス・ミックスは間違っちゃいないが、4ツ打ちビートを強調したリミックスは、細かく刻むシンコペーション・リフレインを武器にするウラジミールの魅力を損ねてしまいかねない。アルバムの流れもココでガラリと変わるので、あくまでスピン・オフに留めておくべきだろうな。

何れにせよ、画一的なスムーズ・ジャズ作品に辟易とし、若い世代ににはエクスペリメンタルなフィーチャー・ジャズ作品ばかりが注目される中、こうしたジャズ・ベースのフレッシュなタレントが現れるのは嬉しいこと。既に40歳代なので若手ではないが、これから注目していきたい人ではあるな。